また岸田ショック
岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」が、市場の「日本売り」を誘発している。
岸田首相の発言が総論に終始し、実行に移そうとしている「新しい」政策の全体像が見えないため、首相が断片的に語る政策に株式市場は反応している。岸田首相は国会答弁で「投資家の誤解を解く」とも語っているが、海外投資家の疑心暗鬼は募るばかり。潮が引いて行くように日本から資本が逃避しつつある。

岸田氏が首相に就任した2021年10月4日の日経平均株価終値は、2万9794円37銭。これを100とした指数は2月22日終値で93.0。それほど下がっていないように見えるかもしれない。ところが、日経平均株価を金の1グラム当たり小売価格で割った数値、いわば金建ての日経平均株価を同様に比較すると、100だったものが83.3まで下落している。
最近、日本円の実質実効為替レートが50年ぶりの低水準だと報じられて話題になったが、円の価値が下がることで、見た目以上に日経平均株価の価値は下落していると言えるのだ。日本円で取引している日本人が気がつかないところで、岸田首相就任後の日本株は大幅に下落していると言っていい。
就任後、何度か、首相の発言がきっかけで株価が下がり、「岸田ショック」と言われた。就任前の総裁選で掲げた政策集に「金融所得課税の見直しなど『1億円の壁』の打破」と明記されていたが、首相就任後は「先送り」する姿勢を見せた。
1億円の壁とは、富裕層の税負担率が所得1億円をピークに低下している事を指し、その原因が一律20%に止まっている金融所得課税にあるとされている。その課税強化には自民党支持層からも反対の声が根強い。
ところが岸田首相は、国会質疑で「新しい資本主義」を問われると、「利益が株主だけに分配されるのは問題」だと繰り返すため、市場関係者の間では「岸田首相は課税強化を諦めていない」という見方が浮上。その度に株価が下げる展開になった。