「ミンスク2停戦合意」とは何か?
次に「ミンスク2停戦合意」について知っておこう。
前述のように、この停戦合意は2015年2月に成立している。合意に署名したのは、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領だ。プーチン以外は、すでに引退し、「前大統領」「前首相」になっている。

「ミンスク2合意」の最重要項目は、もちろん停戦だ。その次に重要なのは、「憲法改定」に関する項目だ。
「ミンスク2」には、2015年末までに憲法改定を実施すること。憲法改定によって、ウクライナ政府は、「地方分権化」を進める。また、ルガンスク、ドネツクに特別な地位を与える法律を制定することなどが記されている。
ところが、ロシアがしばしば強調するように、ウクライナ政府は現在に至るまで、この合意を履行していない。
この合意は、ロシアとウクライナだけでなく、ドイツとフランスの首脳も署名している。それで、ドイツ・ショルツ首相、フランス・マクロン大統領とプーチンの会談では、「ウクライナにミンスク2合意を履行させること」も重要なテーマになった。
しかし、今回、ロシアがルガンスク、ドネツクの独立を承認したことで、「ミンスク2合意」は「消滅した」といえる。
ゼレンスキー大統領は2月22日、「ロシアが一方的にミンスク2合意から離脱した」と主張。同日プーチンは、「ミンスク合意は、ずっと前から損なわれていた」と語り、ウクライナを非難した。
「ミンスク2合意」の失効について、ロシアはウクライナを、ウクライナはロシアをそれぞれ批判している。国際社会は、どちらの主張を支持するのだろうか?
確かに、「ウクライナが長年、ミンスク2合意の履行を拒んできた」のは事実だ。しかし、ルガンスク、ドネツクの独立を承認し、ロシア軍を両地域に入れるのは、国際社会からは「やりすぎ」と認識されるだろう。
既述のように、両共和国を「国家承認」した国はロシアしかない。だから、ロシア軍がルガンスク、ドネツクにいることは、国際社会から「ウクライナ領に侵攻した」と認識されても仕方ない。