2022.02.24

習近平政権に思わぬ試練、徐州「鉄鎖女事件」が暴いた人身売買の闇

「明日は我が身」と世論の怒り爆発

「谷愛凌にはなれないが…」

「あなたが10億回生まれ変わっても谷愛凌にはなれないが、あの『鉄鎖の女性』とはほんの僅かの差にすぎない!」中国のネットで今、この言葉が流行っているのだという。

このほど閉幕した北京冬季五輪で中国国民の話題をさらったのは、フリースタイルスキーで2個の金メダルと1つの銀メダルを獲得した谷愛凌(アイリーン・クー)選手だった。

米カリフォルニア州生まれで米国人の父と中国人の母を両親に持つ18歳の彼女は、国籍問題を曖昧にしたまま、中国選手として出場、中国企業など約30社のイメージキャラクター契約を結ぶなど両国の間で「いいとこ取り」をしたが、中国はメディア総出で「全能少女」「天才少女」と称賛した。

だが同じ頃、もう1人の中国人の悲惨な境遇がネットで報じられると、怒りと同情が急激に広がり、世論の大きな波を引き起こした。

事の発端は1月28日、抖音(TikTokの中国語版)のあるアカウントが発表した動画だった。中国江蘇省徐州市の豊県という農村で、8人の子どもを生んだという中年女性が首に鉄の鍵と鎖を付けられ、狭く汚い部屋に放置されていた。

江蘇省徐州で発見された女性の画像  中国ネット報道より

歯ほとんどが抜け落ち、動画を撮影した人の問いかけにもまともに答えられないなど、精神も病んでいる様子に、「まるで家畜のような扱いだ」「女性は人身売買の被害者では」との世論の批判が向けられた。

「たとえ犬や猫でも、十数年鎖につながれ、歯が抜け落ち、しかも絶えず交配させられ子を産まされたら、残酷で見ていられず、大きな騒ぎとなるだろう。だがこのような残忍な事件が1人の女性に、しかも21世紀の世界第2の経済大国となり、2度の五輪を主催した中国に起きるとは!」ある微博の書き込みだが、多くの人々が同じ思いを共有したのだった。

 

中国では「人口拐売」と呼ばれる、女性や子どもを拉致し売り飛ばす事件がいまだに跡を絶たない。これまでも映画や小説の題材となり、多くの悲劇がニュースなどでも伝えられてきた。特に、今回の事件が起きた徐州では、昨年「中国で最も幸福感のある都市」に選ばれたが、以前から女性の「拐売」が猖獗を極めていたという。

在米の学者・ジャーナリストの何清漣によると、1989年5月に出版されたある書籍に、1986年から89年の間に、徐州市の6つの県で「人販子」(人身売買のブローカー)が全国各地から4万8100人の女性を「拐売」し、しかも徐州全体のタクシーの運転手の半数がこの犯罪行為に関わっていたとの記述があったという。

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