現在放送中のNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『カムカムエヴリバディ』は、安子(上白石萌音)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)の三世代ヒロインが100年にわたるファミリーヒストリーを紡ぐという、朝ドラ史上初の試みで注目を集めている。

本作の脚本を手がけるのは、朝ドラ『ちりとてちん』(’07〜’08年)、大河ドラマ『平清盛』('12年)、異色の時代劇コメディ『ちかえもん』(’16年)などを代表作に持つ藤本有紀。落語や浄瑠璃、古典ミステリなどから題材を取る本歌取りの手法や、人間の多面性や複雑な人間関係を丁寧に描く筆致、積み重ねた伏線を鮮やかに回収する構成など、遊び心のある緻密な作風で高い評価を得る脚本家だ。

そんな彼女が満を持して手がける朝ドラ2作目『カムカムエヴリバディ』も、ご多分に漏れず巧みな構成力を存分に発揮している。ここでは藤本脚本の妙から、本作の魅力について考えていきたい。

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大胆な省略と時間経過が物語にメリハリを生む

まず本作の特徴として上げられるのが、「省略」を巧みに使ったダイナミックな緩急の付け方だ。

筆者は放送開始から1日1話ずつリアルタイムで視聴していたが、特に「安子編」の序盤を1話ごとに見ているときは、正直これといった目新しさを感じることができずにいた。不覚にも、朝ドラによくあるベタな王道展開がゆったり描かれている、という印象を持っていたのだ。

だが、1週間を振り返ってみると「もうこんなに話が進んでいたのか」とびっくりした。限られたエピソードの中に、時代背景や登場人物のキャラクター、関係性とその変化、ストーリー展開などの必要十分な要素が、無駄なく凝縮されている。実は非常にスピード感のあるテンポでたくさんの情報が詰め込まれているのに、それを感じさせない脚本と演出の手腕に二度びっくりした。

それでいて、描くべきところはじっくりと描き、そうでないところは思い切って省略する。時には安子を8歳から14歳へ、るいを7歳から18歳へ、ひなたを10歳から18歳へ一気に時間経過させることもいとわない。このメリハリによって、100年の長きにわたる物語が、下手をすれば単に出来事を駆け足で羅列した総集編のような本編になってしまう危険性を、巧妙に回避しているのである。