美しい地球を構成する水、土、森、海、山、川、植物……、周りにある環境を大切にすることはもちろんですが、そもそも自然とは人間が守ってあげるものではなく、むしろ私たちが守られ、多くのことを学ばせてもらう存在。それぞれの自然と、そこから得た学びのストーリーを紹介します。今回は、三陸の海を舞台にした、漁師・三浦大輝さんのお話です。

三浦大輝(みうら・だいき)
1994年、大阪府生まれ。大学卒業後、証券会社に入社。22歳で宮城県石巻市雄勝町に移住し、漁師見習いに。2020年に県漁協雄勝湾支所の正組合員に。牡蠣の養殖などを手がける。

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証券会社勤務から漁師へ。
三陸の海で見つけた生き方

宮城県石巻市雄勝町は、ホタテやホヤ、ギンザケなどの養殖業が盛んな漁師町。三浦大輝さんはここで若手漁師として奮闘している。4年半前に大阪から移住し、師匠である漁師・佐藤一さんの下で、主にホタテやギンザケなどの養殖に携わりながら、2020年には区画漁業権を取得。牡蠣養殖をスタートさせ、地元の加工会社とコラボした商品を発売するなど、着実に成長してきた。

10月、生まれた海に戻ってきた秋鮭を捕獲する定置網漁。早朝から続く作業にもかかわらず、魚が網に入るとこの笑顔。卵を持ったメスは、ずっしりと重い。

取材に訪れた10月は養殖するホタテや牡蠣に加え、定置網で捕獲する秋鮭の水揚げシーズン。未明の3時ごろには船を出して水揚げを始め、日が昇り始めるころに港に戻ってくる。その場で殻を開けてくれたホタテの身はぷっくりと大きく、上々の出来栄えだ。

「約1年間、大切に面倒を見てきたものが育って出荷されていく。この瞬間が一番嬉しいですね」と三浦さん。自分が管理者として育てる牡蠣も立派に育ち、出荷の日を迎えた。養殖と聞くと、稚魚や稚貝を海に入れ、その成長を待つというイメージが強いが、じつは日々、海の状況を見ながら適切に手をかけてやらなければいけないという。

ロープに稚貝を吊るす「耳つり方式」で育てたホタテ。海中のプランクトンを食べて育つため、海の環境がダイレクトに影響する。

「ホタテや牡蠣はロープに稚貝を吊るして海に入れるのですが、貝が成長するにつれて重みが増すので、沈みすぎてしまわないよう、適宜ロープに付ける浮き玉を増やさないといけない。牡蠣の場合はムール貝がくっついてきて栄養を奪ったりするので、その駆除にも頭を悩ませる。そういう管理が適切に行き届くかどうかで、同じ浜で同じものを養殖していても実入りに違いが出るんです」

師匠の佐藤一さん(左)と、弟弟子の冨樫翔さん(右)と。佐藤さんはふたりの父親のような存在。

経験がものを言うのは海に出て魚を獲る漁師と同じ。そうしたひとつひとつを、師匠である佐藤さんの姿から学んできた。

「移住した当時は僕みたいな“よそ者”が漁師になるなんて前例はなくて、『なんでこんな田舎に来たんだ、帰れ』なんて言われたこともありました。小さな漁村ですし、受け入れてもらうにはとにかく頑張っている姿を見てもらうしかない。そんな状況の中で僕を雇ってくれた佐藤さんには、感謝しかないです」

漁師5年目の三浦さん。今では船の操縦も板についてきた。