泣いて、笑って、銀メダル!ロコ・ソラーレ大躍進のウラ側に迫る

オリンピックは「ご褒美の時間」??
先日閉幕した北京オリンピック。さまざまな名場面が生まれましたが、終盤に特に盛り上がったのが、カーリング女子日本代表チーム「ロコ・ソラーレ」による快進撃でした。笑顔で天真爛漫にプレーし、負ければ人目を憚らず涙を流す姿がとても印象的でしたが、そうした喜怒哀楽あふれる「ロコらしい」スタイルは、どのようにして生まれたのでしょうか。チームの設立者である本橋麻里氏のコメントとともに、今回のオリンピックを振り返ります。

オリンピックのメダルが目標ではなかった

北京五輪で自分たちの持つ日本カーリング史上の五輪最高位を塗り替え、銀メダルを獲得した日本代表のロコ・ソラーレは、2010年バンクーバー五輪に「チーム青森」のメンバーとして出場した本橋麻里が「故郷の北見で新チームを」と結成したチームだ。

本橋自身は平昌五輪までロコ・ソラーレのメンバーとして活動したが、現在はチームの代表理事を務めながら、育成に重心を置いたチーム「ロコ・ステラ」の選手としてもプレーしている。

2018年平昌五輪女子カーリング表彰式の様子。右端が本橋麻里氏(Photo by gettyimages)

その本橋だが、チーム結成以来、決して2018年の五輪銅メダル、それを上回る今回の銀メダルを目標としていたわけではなかった。

「選手としている以上はオリンピックは目指すところではあるけれど」と前置きした上で、「地域に愛されるチーム、長く応援してもらえるチーム」を第一に、運営、強化、育成を続けてきた。

実際に本橋をはじめ、オリジナルメンバーである鈴木夕湖吉田夕梨花を擁しても、ソチ五輪までの4年で目立った成績といえば、2012年の日本選手権準優勝のみだった。

2014年に吉田知那美を、2015年に藤澤五月を迎えてからはパシフィック・アジア選手権で優勝。2016年の日本選手権でついに初優勝を果たし、世界選手権でも準優勝に輝く。

しかし、2016/17年シーズンではパシフィック ・アジア選手権3位、冬季アジア大会も3位、日本選手権でも準優勝と再び勝てないシーズンが訪れた。

敗戦のたびに本橋は前向きな言葉を重ねた。

「もちろん選手ですから目の前の結果には悔しいですけれど、それでもロコらしく笑顔でカーリングを楽しみます」

 

ロコらしいカーリング

この「ロコらしく」、「笑顔で」、「楽しむ」に違和感を抱くファンや関係者は少なくなかった。

負けているのにヘラヘラしている

楽しまないで真剣にやれ

そんな厳しい声もあった。本橋は自身の著書『0から1をつくる』(講談社現代新書)で「私の伝え方の問題だった」と反省しきりだが、一方で「試合で楽しさを得るためには厳しい練習が必要。それを選手が理解してくれている」と話していたこともあった。

例えば吉田知那美は、平昌五輪の選手村で他国の女子選手が綺麗なネイルを施していることに衝撃を受けた。

「ああ、もうこの人たちはやるべきことをすべてやってここに来てるんだ。もう楽しむだけだからこんなにリラックスできているんだ、とひとつの正解をもらった気分だった」

藤沢五月の座右の銘は「らくばる」、楽して頑張るだが、「楽しむために頑張る」とも解釈できる。やはり本橋も、同じ「楽」でも「ラクする」と「たのしむ」のとはまったく違うと考えている。

Photo by gettyimages

特に銅メダルの平昌五輪後からさらに綿密な準備と、本番を楽しむために必要な想定を繰り返した。すべては本番の試合を楽しむためだ。

チームスローガンに「The best is yet to come」(まだこんなもんじゃない)を掲げ、国内外の曲がるアイス、曲がらないアイスでの戦い方を学んだ。

2019年は中部電力、2021年は北海道銀行にそれぞれ決勝で競り負けるなど、平昌五輪以降で日本選手権を制したのは1度だけだったが、それでも「勝つと得るものがあるけれど、負けると学ぶものがある」(吉田知那美)、「もう少しタフになって帰って来ます」(藤澤五月)などと語り、決して折れなかった。

折れなかったのは、「みんなで笑って自分たちらしいカーリングをしたい」という思いをチームで共有できていたからだ。

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