2022.02.24
# 科学史

天才物理学者も取り憑かれた謎の数「137」の正体とは?

物理定数と科学者の世にも奇妙な物語

あなたの「ラッキーナンバー」は?

みなさんは、自分にとっての「ラッキーナンバー」を決めていますか?

たとえば、「自動車の登録ナンバーはこの4桁がいい」とか、「ロッカーを使うときにはどうしてもこの番号を探してしまう」といった"こだわりの数字"をもっている人もいるのではないでしょうか。あるいは、職業上の理由から、縁起の良い数字や逆に避けたい数字がある、という人もいるかもしれません。

【写真】"こだわりの数字"をもっている人も多いのでは?

数字にこだわる職業の筆頭といえば、数学者です。インド出身の天才数学者として知られるラマヌジャンと、彼の才能を見出してイギリスの大学に招いた名伯楽で英国人数学者であるハーディのあいだに、こんなエピソードが知られています(〈「1729」という数字の秘密…ラマヌジャンを見出した数学者ハーディ〉https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78216を参照)。

ある日、体調を崩して入院していたラマヌジャンを、ハーディが見舞います。ハーディが乗ってきたタクシーのナンバーが「1729」だったと聞いたラマヌジャンは、この数が「2つの立方数の和として2通りに表せる最小の数(1729=1³+12³=9³+10³)」である、と即座に指摘したといいます。

二人の交流を描いた映画「The Man Who Knew Infinity」(邦題「奇蹟がくれた数式」、2016年公開)でも、このエピソードが描かれています。常人にとっては無味乾燥な数字でも、数学者の手にかかると、そこに隠れていたさまざまな意味が明かされるという興味深いエピソードです。

「The Man Who Knew Infinity」(「奇蹟がくれた数式」)予告編

数字に込められた叡智と努力

数字にこだわることにかけては、科学者も負けていません。

科学者は自然界のありふれた現象から、そこに隠れている共通の法則を見出します。「物理法則」です。

そして科学者は、それら法則にひそむ、ある共通の数字が現れることを示します。そのような数字を「物理定数」とよびます。

物理定数は、その法則が正しいのかどうかを検証する、重要なカギとなる存在です。1つの物理定数の精度を一桁上げることに、何年もかかることも珍しくなく、時には生涯を捧げる科学者もいるほどです。多くの科学者による、そのような長年にわたる探求によって、今日、さまざまな物理定数が正確に求められています。

たとえば、

  • 光の速さ「c」=299 792 458 m/s(メートル毎秒)
  • エネルギーの最小単位(エネルギー量子)に相当するプランク定数「h」=6.626 070 15×10⁻³⁴Js(ジュール秒)

などです。桁の多さに目がくらくらしそうですが、それこそこの数字の一桁一桁に、科学者の叡智と努力が込められてきたのです。

そして、現在の量子エレクトロニクスやナノテクノロジーといった最先端技術は、これら正確に求められた物理定数に支えられている、といっても過言ではありません。科学者が何桁にもわたる物理定数にこだわるのも当然で、彼ら/彼女らにとって、末尾の桁が一つ違うかどうかは大問題なのです。

【写真】関係する物理定数とSIのシンボルマークをボディペイントして祝う産業技術総合研究所の研究者たち2019年5月におこなわれた国際単位系(略称は「SI」)の基本単位の定義改定に際して、関係する物理定数とSIのシンボルマークをボディペイントして祝う産業技術総合研究所の研究者たち(産業技術総合研究所公式ツイッターから)

ただし、科学者が物理定数にこだわるのはその正確さについてであって、数字の並び方自体に意味があるわけではありません。この点は、数学者の数字へのこだわりとは、趣の異なるところです。

なぜでしょうか?

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