認知症とはどうしてなるのか、どうやって進行するのか。科学で分かっていることもあれば、わからないことも本当に多い。
特に認知症になった本人と近くにいる家族は、その「わからない」に翻弄されてしまうのではないか。
にしおかすみこさんは2021年の9月から始まった連載「ポンコツ一家」で、2020年、コロナ禍で実家に帰ったのを機に母の認知症の疑いがわかり、同居を始めた顛末を、ユーモアたっぷりに率直に綴っている。「他人事ではない」「がんばりすぎないで」「応援しています」とSNSでも多くの声が寄せられている。

リアルな体験の中で読み手が感じさせられるのが「認知症の不思議さ」だ。ついさっきのことを忘れているのに、昔のことはスイッチが入ったように思い出すこともある。にしおかさんの連載第6回は、2021年1月、にしおかさん母の通院のときのことをお届けしている。その道すがら祠で手を合わせた際に母親が突然思い出したのは、2016年12月のクリスマス、にしおかすみこさんが受けた手術のときのことだった。

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「2016年クリスマスのこと」とは

「下からポロリ事件に感謝!」と親子で祠に手を合わせる。  

母の発言の整理整頓が追いつかない。
事件でもない。
ともかく説明したい。聞いて欲しい。

2016年12月25日に遡る。
入院といっても1週間程度だった。
何年も経過を見て決めたことだったが、
母にはギリギリまで黙っていた。

電話で母は「開腹? 腹腔鏡手術? 大事な選択だよ」と真っ先に手術方法を聞いてきた。
さすが元看護士。

「腹腔鏡だよ。数か所ちょっと切るだけだから」

「バカ!お腹切るんだからどっちだって一緒だよ!下から出してもらいなさい!赤ちゃんだって出てこれるんだから、筋腫くらい余裕だよ!」

…….下から?
「そんな方法あるの?」

「あるわけないだろうバカ! でも言ったらやってくれるかも知れないだろ? 一か八か奇跡を起こすのが医者なんだから!」

看護師免許を返納させたい。
こうも言っていた。
「もういい!あんたじゃラチがあかないから病院どこ?担当の医者教えて!もちろんママが看護師だってバレないように素人のふりして、先生のプライドたてながら誘導するから!」

誘導……「どこへ? 何を?」

「バカ! 全身麻酔だって皆が皆無事なわけじゃないんだよ! そのまま死んだらどうするんだ! 麻酔なしで、筋腫を下から産み落とすようにしてください! うちの娘はそれくらい耐えられます! って」

無茶苦茶だ。