2022.03.01
# ビジネス

株や暗号資産に投資するより「自分に投資する」ほうが儲かる「本当の理由」

投資のシンプルな本質
田内 学 プロフィール

投資マネーのむこうに「人」がいる

ここで、投資マネーというお金のむこうに人がいることに気づく必要があります。大量に溢れる投資マネーがどこに流れていくかというと、企業に流れます。そのお金は最新設備やソフトウェアを買うことや、人を雇うことに回ります。設備やソフトウェアなど物を買うことに流れるお金も、それらを作る人に流れます。つまり、多くの投資マネーはどこかで働いている人に流れているのです。

日本で新たな産業が成長しないのは、いい人材がいないこともその理由の一つです。ここ数年、転職を斡旋する会社の広告をよく見かけませんか?どの会社もいい人材を見つけようとしています。岸田政権でも成長戦略を打ち出していますが、問題は投資するお金が足りないのではなく、人材が足りないことです。

有用なスキルを身につけた人材こそが、今の日本で希少性が高いのです。希少性が高いというと、なんだか大袈裟に聞こえるかもしれませんが、必要とされているスキルならなんでも良いでしょう。他の人が投資の勉強に使っている時間を、自分のスキルアップに回せばいいんです。投資で儲けるよりも、自分が働くことで儲けるお金を増やすことができます。

 

ピケティの不等式を知っている人はこの話に疑問を抱くかもしれません。ピケティという経済学者の作った有名な不等式r>gです。これは、労働によって得られる富よりも、投資によって得られる富の成長の方が早いという意味です。しかし、これは、投資の勉強をした方がいいという話ではありません。

ここでいう「投資によって得られる富の成長」は平均値を表しています。多額のお金を動かすプロたちがひしめく中で、平均を超えることは非常に難しいです。

一方の「労働によって得られる富」もまた、社会全体の平均です。去年の労働者全体の平均賃金と、今年の労働者全体の平均賃金を比べてどれだけ成長したかということです。1年経っても、労働者全体の平均的な能力はそんなに成長しません。熟練労働者が退職し、新人が入ってくるからです。しかし、一人ひとりの労働者は1年経つごとに1年分成長しています。さらに、スキルを身につけることができれば、それ以上に給料を増やすことができるのは言うまでもありません。

個人単位では、努力次第でr<gになるのです。

私の著書『お金のむこうに人がいる』で詳しく書いたのですが、お金がどこに流れているのかを考えることが、投資や経済を理解する上で非常に重要です。

経済成長が小さくなった今の時代に投資すべきは、自分自身なのです。

「お金のむこうに人がいる」という本では、お金にまつわる11個の「謎」を解いていきます。初めは自分の財布の中のお金について考え、徐々に財布を大きくしていきます。財布を社会全体まで広げたときに、新たな「謎」に気づきます。

この謎こそが、今の私たちが、社会を構成する一人ひとりが解かなければならない謎です。

■目次
【第1部】「社会」は、 あなたの財布の外にある。
第1話 なぜ、紙幣をコピーしてはいけないのか?
第2話 なぜ、家の外ではお金を使うのか?
第3話 価格があるのに、価値がないものは何か?
第4話 お金が偉いのか、働く人が偉いのか?

【第2部】「社会の財布」には 外側がない。
第5話 預金が多い国がお金持ちとは言えないのはなぜか?
第6話 投資とギャンブルは何が違うのか?
第7話 経済が成長しないと生活は苦しくなるのか?

【第3部】社会全体の問題は お金で解決できない。
第8話 貿易黒字でも、生活が豊かにならないのはなぜか?
第9話 お金を印刷し過ぎるから、モノの価格が上がるのだろうか?
第10話 なぜ、大量に借金しても潰れない国があるのか?
最終話 未来のために、お金を増やす意味はあるのか?
おわりに 「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?
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