政治の役割は「何か困っている人がいたらそれを解決すること」

昨年12月17日の参議院予算委員会で林伴子内閣府男女共同参画局長は、旧姓の通称使用は本人だけでなく企業や行政にとってもコストや事務負担が大きく、経済的にマイナスであること、パスポートは旧姓併記ができるが航空券やビザは戸籍名なので混乱を引き起こし、海外での仕事や生活に支障が及ぶことを指摘している。さらに、戸籍名と通称を使い分けることで、マネーロンダリングなどを疑われるリスクがあることにも言及している。

内閣府が2019年に「女性活躍加速のための重点方針」に関して各省庁にヒアリングしたところ、外務省はパスポートへの旧姓併記は「複数の姓を公証しているように見えるため、旅券の旧姓を国内外で悪用(詐欺行為等の犯罪に利用)する者が現れる可能性」を指摘している。実際昨年12月、自民党の「選択的夫婦別氏(別姓)制度を早期に実現する議員連盟」が開いた、旧姓の通称使用のリスクやトラブルに関する勉強会では、主に海外で働く人たちのさまざまなトラブル事例などが報告された。

パスポートへの旧姓併記は悪用されるリスクがあることも指摘されている Photo by iStock
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夫婦別姓ー家族と多様性の各国事情』(ちくま新書)に収録されている座談会で、自民党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟』幹事長を務めている鈴木馨介衆院議員は、政治の役割は何か困っている人がいたらそれを解決すること、まさにこの夫婦別姓問題は「現実的な困りごとを解決するという極めてプラグマティック(実務的)な問題」だと述べている。

これに対してこの座談会に参加している大和證券グループ副社長の田代桂子さんはこう話している。
「旧姓を通称として使えばいいという対応策がよく言われますが、そもそも二つの名前を使い分けること自体が、金融をはじめとするビジネスの場面においては、全くプラグマティックではありません。(中略)ビジネスは、人と人との信用、信頼関係が全てですので、途中で名前が変わるということは、その点でも不都合が生じることもあります」

さらに鈴木議員は次の点も指摘している。
「これからDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいき、生活や社会にデジタルの仕組みが浸透していくと、セキュリティーとプライバシーの問題が必須課題になります。その時に名前が複数あるというのはいいことではなくて、法的な正式名が一つであることが望ましいと考えられます」

第2次安倍政権では法律まで制定し、「女性の活躍」を重要政策として喧伝していた。だが、結果的には女性の役員や管理職の数は劇的には増えていない。政府が本気で「活躍」を望むなら、働く女性たちの「困りごと」に真摯に向き合い、旧姓の通称使用拡大という方法がなんら本質的な解決に繋がらないことを認め、選択的別姓制度の導入に向けて動くべきではないかと思う。