海外での仕事に弊害、ペーパー離婚を選択

元国連職員で現在イギリス在住のAさんもこの「旧姓の通称使用」の限界を指摘する。もともと結婚によって夫婦が同姓になる法制度や、その中で96%は女性が改姓をしている現実に強い疑問を感じ、法的な結婚という形にはこだわっていなかった。だが、交際していた日本人のパートナーは「結婚」を強く望んでいた。苦肉の策として改姓を避けるために選んだのが、当時Aさんが滞在していたアメリカでの結婚だった。

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だがその後、Aさんは日本に一時帰国した際に、日本でも「入籍」せざるを得なかった。パートナーが海外赴任する際の配偶者ビザの発行に、日本での婚姻関係が必要とされたためだ。Aさんはやむを得ず日本での入籍を受け入れたが、自らのアイデンティティの喪失だけでなく、国際機関で働く上で、戸籍名と旧姓を通称として使い分けることでの“実害”も心配していた。

「パートナーからは『旧姓を通称として使用すれば問題ないじゃない』と言われましたが、それは変えない側だから言えることです。実際、国連の職員カード(ID)は原則としてパスポートのデータにある戸籍名しか登録できません。IDの名前と通称が違えばさまざまなトラブルが起きます

Aさんは名前をめぐって一時はパートナーとの関係解消の危機までになった。結果として入籍から1年後にペーパー離婚を選択した。Aさんはこう話す。

別姓を認めない、旧姓を通称使用すれば十分と考える人たちは、海外で仕事をするという実態を理解していません。様々な政策でもうたわれているように、世界で活躍する人材を支援するというのであれば、海外で日本人が働きやすい環境を整備してほしいです」

海外の仕事で「2つの名前がある」ことを理解をしてもらうのは困難だ Photo by iStock