天下一品が好きな理由

食べている時のあたいは静かだ。一言も話さない。人と来ていようとお構いなしにアツアツのこってりスープと麺を口に放り込むだけの作業に没頭する。しかし脳内ではいつもこんなことを考えている。「ああ美味しい。やっぱりこってりラーメンは美味しいな」と。

すると一緒に来てくれた人が、あたいを見て「もう食べたん? 相当お腹減ってたんだな」だとか「お前うまそうに食うよな〜」と言う。

確かにあたいは天一のこってりだけは無心で人目も気にせずに食べられるかもしれない。居酒屋と違って相手や周りに合わせて注文スピードや飲むペースに配慮しなくてもいいし、食事の合間に話し合わなくてもいい。勝手に食べて、勝手に楽しんでいいのがラーメンだから。気が楽なのと、あたい自身天下一品を楽しんでるからだろう。

「でも、なんでそんなに天下一品が好きなのよ。そんなに頻繁に食べるものじゃなくない? 特にこってりなんて」

ある時、あたいの働くゲイバーのママにそう言われた。

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そんなもん味が好きだからに決まってんだろ、と返そうと思ったけれど、その頃のあたいはようやく元気を取り戻して、自身のことを振り返ったりできるようになっていたので、あたいは「なぜこってりラーメンが好きなのか?」を考えるようになった。

そしてたどり着いた答えは一つだった。

「幸せになれるから」

そういえばあたいは、昔からこってりラーメンが好きだった。地元には無かった天下一品に、上京してからゲイ風俗の同僚と食べに行った。そこで同じように地方出身の子と「こんなうめぇラーメンあんのか」と驚き合った。