こう見えて実はビビリなんです

2月19日から、渋谷のシアター・イメージフォーラムなどで公開される映画「リング・ワンダリング」で、笠松将さんは、ある娘との出会いから、東京に眠る記憶を知ることになる漫画家志望の青年・草介を演じた。タイトルの「リング・ワンダリング」とは、人が方向感覚を失い、円を描くように同一地点を彷徨うことを指す和製英語だ。

「映画の主役を演じる役者を探していた監督が、僕の別の作品を観てくださって、声をかけていただきました。嬉しかったです。アート系の、ファンタジックな作品だったせいか、現場はすごく淡々としていて、監督は監督、僕は僕、阿部(純子)さんは阿部さんと、それぞれの持ち場で自然に過ごしていました」

撮影/篠塚ようこ
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この映画でも、「青天を衝け」と同様に、笠松さんが一筋の涙を流すシーンが印象的だったが、彼自身は、泣く芝居が得意なわけではないという。

「日常生活の中で、人ってそんなに泣かないじゃないですか。僕は、芝居をするときに無理をしたくないんです。声色を作ることもしないし、無駄な動きもしない。不自然なことはしたくないから、今回も監督に、『1回しか泣けないです』と伝えたら、その一回に向けて完璧に準備をしてくださって。一発OKでした。物語も、ある女性との出会いによって、東京の風景が変わっているという、不思議な話なんですが、人間って、環境が変わっても、ちょっとずつの変化なら、意外とわからないんじゃないかな。草介が、自分が置かれている環境に違和感を覚えても、大きなリアクションは取らずに淡々としていると、かえってお客さんがあたふたする。その方が楽しめるかなと思ったんです」

(c)2021 リング・ワンダリング製作委員会

演じること自体が面白いと思ったことは一度もない。オーディションに受かった時や、オファーが来た時は「やった!」と思うが、台本を読み始めた途端にしんどくなるらしい。

「こう見えてビビりなんです。お芝居って正解がないし、オーディションなら爪痕残そうとして、ちょっと奇を衒ったことをしても受け入れられるけど、お芝居ってチームプレーなので、下手に目立ってもそれが作品にとってよいとは限らない。あとは、みんなが『よかった』と言ってくれても、僕の中では、『もっとできた』と思うことも多いし……。人の評価より、自分が自分の芝居にいちばん厳しいのかもしれません」