芝居のうまい俳優になりたいと思っていた。

高校卒業後、18歳で名古屋から単身上京した。アルバイトで食いつなぎながら、連日オーディション雑誌をチェックした。どうやったら俳優になれるのか見当もつかずに、片っ端から、芸能プロダクションに応募用紙を送った。その数100通以上。「スカウトされたりしないかな?」と、表参道を何往復もしたこともある。

あれから11年。エキストラから始まって、自力で、着実に一つ一つのチャンスを掴んできた彼が、全国的に“芝居のうまい若手俳優”として認知されたのが、大河ドラマ「青天を衝け」の最終回ではなかっただろうか。吉沢亮さん演じる渋沢栄一の孫・渋沢敬三役。最終回は、敬三の視点で物語が展開し、ラジオを前に未来の日本について弁舌を振るう祖父を目にしながら、涙を流す。その凛とした泣き顔は、祖父の思いを自分が受け継ぐのだという強い覚悟と、祖父への尊敬の念に溢れていた。

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「あのシーンでは、最初、周囲の人たちの表情を映していく、そのカット割までは決まってなかったんです。吉沢さんの見せ場でもあったので、最初に監督と話したときは、『演説のシーンに僕は要りますか?』と聞いてしまったほど。監督も、『吉沢さんの表情を先に撮ってから決めましょう』とおっしゃって。吉沢さんメインの本番が終わったとき、『笠松くん、どうする?』と言われて、『僕は今、自分の祖父が、91歳になっても最前線で戦おうとしている姿に、気持ち的にはこみ上げるものがありました。使うか使わないかはお任せしますが、その気持ちを表現したいです』と伝えました。そうしたら、『好きにやってください』と言われて、あのシーンに」

撮影/篠塚ようこ