将校の反逆は、侵攻を止められるか?
ちなみに、この公開書簡について大手メディアが報道していないのは、日本だけではない。実をいうとロシアの国営メディアもまったく報じていない。プーチン政権にとってあまりにも「不都合な情報」だからだろう。
この書簡からわかることは何だろうか?
一つは、ロシア軍のかなりの数の将校がウクライナとの戦争を望んでいないこと。もう一つは、将校たちがプーチンへの忠誠心を失っている、ということだ。
これまでロシアで「反プーチン勢力」といえば、反汚職基金の創設者でカリスマ政治ユーチューバー(チャンネル登録者数644万人)のナワリヌイが筆頭だった。

ナワリヌイのグループは、米国や英国の諜報機関とつながっているとロシアでは報じられている。そして、ナワリヌイは、汚職反対、民主主義、言論の自由重視で、いわゆる西側の価値観をもつ「リベラル派」だ。
一方、イヴァショフと全ロシア将校協会は、完全な保守派で、今までプーチンを支持してきた。そんな「強固な支持層」だったはずの将校軍団から辞任要求を突きつけられたプーチンの衝撃は大きいはずだ。
ただ、この公開書簡を受けて、プーチンが素直に辞任するとは思えない。しかし、「将校たちはウクライナ侵攻を支持していないのだな。軍の忠誠心を失えば、自分の権力も危うい」と考えるかもしれない。
あるいは、「自分に反逆した将校は許せない」と考え、全員の逮捕を命じるかもしれない。そうなると、軍の動揺は大きいだろう。