対話に応じない相手なら、まず話を聞く
ジャーナリストとしてのインタビュー取材も、相手との「対話」だと思っています。ときには、まったく共感できない人にインタビューをすることもあります。
こうしたときも、対話によって相手の内在的論理を知った上で、反対意見をぶつけ、アウフヘーベンすることを心掛けています。もし向こうの言い分にもそれなりの理由があれば、それを評価しつつ、こちらの言い分との相違点をすり合わせていくことはできないのか、そこに何らかの解決策や妥協策が見いだせるのではないか、と考えて質問をしていきます。

相手の主張は間違っている、反論したいと思っても、相手が自分の主張をぶつけるばかりで対話に応じない姿勢であっても、とりあえず我慢して、まずは相手の言い分をしっかりと聞くことが大切です。ときには、わかっていてもあえて知らないふりをして「よくわからないので教えてください」と伝え、相手の主張を披瀝してもらいます。
その上で「いや、でもあなたはそう言うけれど」と、その相手の内在的論理の弱点や不十分な点に突っ込んでいく、そういう取材をするのです。その内在的論理はあまりに一方的ではないか? 論理が破綻しているのではないか? それは周囲に理解されないものではないか? などと、相手に指摘するまででとどめます。相手がそれで「あれ? 確かにそうかも」と思ってくれれば、それでOKです。
それ以上のこと、たとえば「あなたの考えは間違っている」などと言うと、誰にでもプライドがありますから、プライドを傷つけられて怒り出してしまうかもしれません。それでは単なる喧嘩になってしまい、生産性のある対話にはなりません。「なるほど、あなたはそういうふうに考えるんですか。そういう意見なんですか。でも、それだとこんなことになってしまいませんか」と言うまででとどめ、深追いしてはいけません。
第2章 自分の頭で考える授業
第3章 折れないしなやかな自分をつくる
第4章 ステレオタイプ思考は脱却できる
第5章 思考が深まる、新しい発想が湧く
終章 思考の方程式