2022.02.24
# 量的緩和 # 日銀 # 家計

世界中で「インフレ」なのに、日本企業が「価格据え置き」にこだわる理由

本当に「お客様のため」なのか?
渡辺 努 プロフィール

決め手は「物価の予想」だった

このように、日本の価格硬直性は、越勢的なインフレ率の低さだけでは説明できません。だとすると、足りないピースは何でしょうか。『物価とは何か』で議論した、価格と価格の相互作用がそれだろうと私は考えています。相互作用の候補としてはいくつか考えられるのですが、私がこれまで接した中でもっとも説得力があるのは、青木浩介が奥田達志、一上響との2019年の論文で提示した仮説です。

青木仮説は次のような状況を考えます。消費者がいつも使っているお店に、ある商品を買いに行ったとします。値札をみるとわずかですが思っていたよりも値段が高い、つまり値上げされていることに気づきました。このお客さんはどのように反応するでしょうか。

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最初に、この国のインフレ率がそこそこ高い、たとえば米国のように年間で2~3%程度上昇している場合を考えます。このお客さんは、この店で買うのをいったんやめて他の店で値段を調べてみようかと考えます。

ですが、物価が全般に2~3%上がっているのですから、他の店でもこの商品は値上げされているかもしれません。他店ではもっと大幅に上がっている可能性すらあります。それに、他店まで行くのは時間も手間もかかります。

あれやこれや考えて、このお客さんは結局他店に行かず、この店で当初の想定より少し高い値段で買うことにします。

次に、物価全般の上昇率がゼロの状況を考えます。先ほどと同じく、お客さんは馴染みの店で、買おうと思っていた商品の値段が上がっているのを発見し、考え込んでいます。

他店に行ったとして、そこではもとの安い値段で売っているでしょうか。先ほどとは異なり、今度は、他店に行けばもとの安い値段で買える可能性が高そうです。なぜなら物価全般の上昇率がゼロだからです。

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