2022.02.24
# 日銀 # 量的緩和 # 家計

世界中で「インフレ」なのに、日本企業が「価格据え置き」にこだわる理由

本当に「お客様のため」なのか?
渡辺 努 プロフィール

1990年代の終わりごろと言えば、バブル崩壊にともなう金融機関のバランスシートの棄損が表面化し、銀行や証券会社の大型破綻が相次いだ時期です。また、韓国やタイなどアジア諸国で自国通貨が大幅下落する通貨危機が起こった時期でもあります。

こうした中で、日本の消費者は自衛的に支出を抑え、その結果、価格に下押しの圧力が強くかかりました。そうした状況下では、品目別分布のピークがゼロ近傍を通り越して、マイナスの領域に突入したとしても不思議ではありませんでした。

しかし企業は、その圧力に抗して価格を据え置き、その結果、ゼロ近傍に大きな山をもつ分布が出現したと考えられます。

「異次元の金融緩和」でも変わらず

つまり、価格が下方に硬直的だったということです。

当時、日銀や政府が強く懸念していたのは、米国の大恐慌期のような、フリーフォール的な物価下落が企業収益を悪化させ、それがさらなる物価下落をよぶという「デフレスパイラル」、さらには、物価下落で企業や家計の債務の実質価値が増大し、それが企業や家計の支出を抑制する「負債デフレ」に陥ることでした。

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幸いにも、そうした事態はどれも起こらなかったわけですが、その理由は、日銀や政府が想定していた以上に、価格が下方硬直的で、それが防波堤の役割を果たしたからです。

ケインズは価格や賃金の下方硬直性には、経済の底抜けを防ぐご利益があると、『一般理論』で指摘していますが、この時期の日本はまさに下方硬直性に救われたと言えます。

しかし、問題は、経済危機が収束しても、約半数の企業が価格据え置きの姿勢を変えず、現在に至るまで続いていることです。日本経済が危機モードを脱したのは2005年ごろとみてよいでしょう。CPI(消費者物価指数)上昇率が月によってはプラスになり、多少明るい兆しが見えてきた時期です。

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