日本で、名医とよばれる「脳外科」「心臓外科」の医師たちを名前で大公開…!

わずか10分で麻痺が消えた

横たわる男性にかけられた緑の布には、足の付け根に小さな開口部がある。そこへ極細のカテーテルがスルスルと吸い込まれてゆく。

モニターには、患者の脳の内部を縦横に走る血管が映し出されている。それを凝視しつつカテーテルを操作するのは、吉村紳一氏(58歳)だ。兵庫医科大学病院脳神経外科の主任教授を務め、カテーテル治療の第一人者として斯界に知られる。

治療開始からわずか10分あまりで、吉村氏はカテーテルを引き抜いた。救急搬送直後、脳梗塞で完全に麻痺していたはずの男性の左手は、元通りに動くようになった。

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見守る家族は、涙を流しながら笑った。

「太ももの血管からカテーテルを脳まで通し、血管が詰まった箇所で、金属でできた筒状の網『ステント』を広げて血栓を搦め取ったり、吸引して取り除きます。太い血管で起きる重症の脳梗塞では、クスリだけでは血管が開通しないことも多いのですが、カテーテルならば問題ない。発症から時間が経ってしまった場合も、成功率が高いのです」

脳梗塞といえば、発症すると麻痺が残り、手足が動かない、うまく話せないといった後遺症に苦しめられるイメージがある。だが吉村氏が'18年に行った臨床試験によれば、カテーテル治療を受けた患者の35%が介助なしで生活できるまでに回復した。これは、クスリだけで治療した場合より約4割も優れた成績だ。

速く、痛みが少なく、予後もいい。脳梗塞患者にとって、まさしく「天の助け」というべき新たな治療法なのである。

カテーテル治療は、かつては心臓に用いるものとされていた。吉村氏は大学院生時代、それが脳梗塞の治療に革命をもたらす可能性に気付いた。

きっかけは実の母が倒れたことだった。

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