美しい地球を構成する水、土、森、海、山、川、植物……自然とは人間が守ってあげるものではなく、むしろ私たちが守られ、多くのことを学ばせてもらう存在。それぞれの自然と、そこから得た学びのストーリーを紹介します。今回は、畑を舞台にした、花屋・壱岐ゆかりさんの学びです。

壱岐ゆかり(いき・ゆかり)
2010年〈THE LITTLE SHOP OF FLOWERS〉をスタート。装花、ボタニカル・ダイ、ワークショップなど気持ちを花に“翻訳”する花屋として活動。

季節に寄り添う花卉栽培、スロー・フラワー

東京で花屋を始めて11年を迎えた〈THE LITTLE SHOP OF FLOWERS〉の壱岐ゆかりさん。都会で花を売るという営みに加えて、装花やワークショップ、イベントなどを通して人の気持ちを花に“翻訳”する花屋として多彩な活動を展開している。彼女の原動力は、その時々の「心の動きを信じる」こと。

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近年は、店頭に出せない花や廃棄になってしまう花から天然の染料を作り、布を染めるボタニカル・ダイという手法で、役目を終えた花に新しい命を吹き込んだり、廃棄となるロスフラワーを「コズミックコンポスト」チームに堆肥にしてもらったり、「循環」をテーマに自然のサイクルに寄り添ったサステナブルな花との付き合い方を模索している。そして2019年からは、花農家と協力して畑で花の生産にも着手。この数年は、旬の花を摘みに畑と東京を行ったり来たりの日々だったそう。この日訪れたのは、神奈川県藤野町で花農家〈four peas flowers〉を営む新井聡子さんの畑。

爽やかな秋晴れの空の下に広がる〈four peas flowers〉の畑。昨年種を植えたユーカリの木は順調に育ち、初めて冬を越えるそう。育ち具合を観察する壱岐さんと新井さん。左:壱岐ゆかり、右:新井聡子(あらい・さとこ)/神奈川県の里山で小さな花農家〈four peas flowers〉を営む。スロー・フラワーという考え方に基づき、季節に即した持続可能な花づくりをしている。

なだらかな丘陵地に広がる200平方メートルほどの畑。標高が高く、11月には初霜が降り、冷え込みも厳しいエリアだが、南東に拓けた日当たり抜群の畑で少量多品目の花々を育てている。「この時期は収穫もすっかり終えて、いまは本当に何もないんですが、あっちの畑には、明日から緑肥用にライ麦の種を蒔く予定です」と、畑を案内しながら新井さんは申し訳なさそうにはにかむけれど、ダリア、ジニア、ニゲラ、アマランサス、ケイトウ、シャクヤク、ムギワラギク、シュウメイギク、ラナンキュラス、ユーカリ……。どんな花を育てているかと尋ねると、本当にたくさんの花の名前が飛び出す。

大輪の花を咲かせているのは、淡いピンクのグラデーションが美しい「大和なでしこ」という品種のダリア。花弁の先が外側に反っているセミカクタス咲きが特徴。