世界各国が目標を掲げ、一気に加速化する脱炭素社会に向けた動き。そんな今だからこそ、環境問題をきちんと理解することが大切。地球で今起こっていることと私たち人間の責任について、基本を学びます。

ほぼ毎年発表される、猛暑や豪雨といった異常気象。日常でも気候の変化は感じているけど、それってやっぱり地球温暖化の影響なの? 率直な疑問に、国立環境研究所の江守正多さんが答えてくれました。また、私たちにできるアクションについても伺いました。

お話を伺ったのは……
江守正多 えもり・せいた
1970年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。1997年より国立環境研究所に勤務。専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。IPCC第5次、第6次評価報告書の主執筆者でもある。

Q.地球の気温は本当に上昇しているのですか?

はい、地球温暖化は疑う余地のない事実として世界で認識されています。IPCC※(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書によると、2011~2020年の世界平均気温は、1850~1900年の世界平均気温より、1.09℃上昇しています。ちなみにIPCCが参照する気温データは、地球上の様々な観測値で測定されたものです。人間が生活している場所だけでなく、海上なども含まれます。

地球温暖化を引き起こしているのが温室効果ガスであることも事実です。「太陽活動が活発になっているのではないか?」という懐疑論もありますが、太陽活動の活発さを表す黒点の数は減少しています。「大気中に0.04%しかないCO2に地球を温めるほどの力はないのでは?」という声もありますが、大気の99%を占める酸素と窒素は、地球を温める赤外線の吸収・放出に影響を与えない物質です。大気を温めるのは1%以下のCO2やメタンといった温室効果ガスだけなのです。

※IPCC
気候変動に関する政府間パネル。世界気象機関と国連環境計画により1988年設立。研究機関ではなく、論文を基に最新の科学的知見を報告書にまとめ、それがCOP※などの国際会議に活用される。195の国と地域が参加。

※国連気候変動枠組条約締約国会議
略称COP。地球温暖化を防ぐ枠組みを議論・決定する国際会議。国連気候変動枠組条約に加盟する197の国と地域が参加。1995年からほぼ毎年開催。COPの後に続く数字は開催回数を示す。2021年11月にCOP26が開かれた。

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Q.気温上昇の原因は私たち人間なのですか?

地球は約10万年周期で温かい間氷期と寒い氷期を繰り返しており、現在は間氷期です。しかし、300年程前に小氷期と呼ばれる少し寒い時期があり、その事実から「今は間氷期に向けて地球が自然と温まっているだけ」とする意見もあります。ですが、この急激な気温上昇はそれだけでは説明がつきません。

IPCCでは1850~2020年までの世界平均気温を、自然要因だけの場合と、そこに人為的な要因を加えた場合とでシミュレーションしています。1950年頃までは2つに大きな差はありませんが、1950年以降から人為的な要因を加えた気温が上昇を続けます。一方、自然要因だけでは気温上昇はほぼありません。そして、実際の観測データは、人為的な要因を加えたシミュレーションとほぼ重なるのです。この結果からIPCCでは、温度上昇を人為起源によるものと結論づけています。

報告書における表現も変化してきました。2001年の第3次報告書では「可能性が高い」という表現。これは66%以上の可能性で人間活動が気温上昇の主な原因であるという意味です。第4次報告書では「可能性が非常に高い(90%以上)」、第5次報告書では「可能性が極めて高い(95%以上)」となり、2021年の第6次報告書でついに「疑う余地がない」と断言するに至りました。何年もかけて研究が蓄積された結果、この結論が導き出されているのです。