名義預金にあたる4000万円には相続税が課される。勲さんからの相続財産は不動産を合わせておよそ1億円。そこに4000万円が加わり、子ども2人が払う相続税は合計315万円から655万円と、倍以上に跳ね上がった。
なぜ、こんな誤算が起きたのか。税理士の山中雄太氏が言う。
「税務署が名義預金か否かを判断する重要なポイントは、預金口座に動きがあるかどうかです」
勲さんが5人の孫へ贈与する際に振り込んでいたのは自身が作った暦年贈与専用の口座だった。

「私もその口座の存在は知っていましたが、『子どもの将来のために』と、まったくのノータッチだったんです」(花江さん)
8年もの間、一度も引き出されることなく、預金だけが増えていく口座。税務署が不審に思うのも無理はない。
勲さんから孫への贈与は認められなかったが、花江さんら2人の子どもに対する贈与は認められている。
「父が振り込んでいた私の口座は、生活費を引き出すために使っていました。買い物に行くときに財布が寂しかったら、そこから下ろすような口座です」(花江さん)