美しい地球を構成する水、土、森、海、山、川、植物……、周りにある環境を大切にすることはもちろんですが、そもそも自然とは人間が守ってあげるものではなく、むしろ私たちが守られ、多くのことを学ばせてもらう存在。それぞれの自然と、そこから得た4組の学びのストーリーを紹介します。今回は、沖縄を舞台にした、マンガ家・タナカカツキさんの学びです。

タナカカツキ
マンガ家。著書に『オッス!トン子ちゃん』『マンガ サ道』『新・水草水槽のせかい すばらしきインドア大自然』など。世界水草レイアウトコンテスト2021で世界ランキング17位(日本人では1位!)。

沖縄のサンゴの問題を理解していますか?

琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設がある、沖縄本島西海岸の瀬底島にて。背後にあるのは、大昔のサンゴ礁が隆起したもの。足元にも白いサンゴの欠片が散らばっている。

右:タナカカツキ、左:山城秀之(やましろ・ひでゆき)/琉球大学熱帯生物圏研究センター教授。サンゴの病気や共生する生物をテーマに研究し、数々の新発見を論文で発表。サンゴを解説した著書に『サンゴ 知られざる世界』がある。

「サンゴが危ない!」と、以前からたびたび騒がれている。でも、何が原因で、減少するとどんな問題が起こるのか、そもそもの生態や役割についても、実はきちんと説明できない人が多いのではないか。同じく、「動物、植物、鉱物のような、ぼんやりとしたイメージ」と言うのは、マンガ家のタナカカツキさん。水槽のなかに水草や生物をレイアウトして循環した環境をつくる「水草水槽」にはめっぽう詳しいが、淡水でなく海水に生息するサンゴについては未知の世界。沖縄の海に学ぼうと、サンゴを巡る旅に出ることにした。

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日本で見られる約400種のサンゴのうち、380種以上が生息すると言われる沖縄の海。サンゴ礁は波や潮の流れから海岸を守るだけでなく、多くの生物の住処であり、海の中の生態系を支える重要な存在だ。

土地の言葉で「うるま」と呼ばれ、「サンゴの島」の異名を持つ沖縄県。800種類に上るサンゴのうち、約400種類が確認され、世界的にもサンゴの多い領域と言われている。着いて最初に訪ねたのは、サンゴ研究の第一人者として知られる、琉球大学熱帯生物圏研究センターの山城秀之先生の研究所だ。

「沖縄でも60年代までは、サンゴの問題って何もなかったんですよ。沿岸に山ほどいて、子供の頃、海は危険と教えられました。釣り糸が引っかかるし、踏んでも踏んでも生えてくるし、かえって邪魔な存在だったんです」

海の黒く見える部分は、サンゴが生息している豊かな海。

昔の海岸を撮った写真を見ると、いまよりも黒い影が目立つ。これはサンゴが元気に生きている証拠。沿岸のサンゴは台風の被害を防ぐ、天然の防波堤の役割も果たしてくれる。

「サンゴは基本的に、イソギンチャクの仲間。動き回らないので植物のようですが、クラゲにも近い刺胞動物です。触手で動物プランクトンなどを食べるほか、体内に共生する『褐虫藻』の光合成でできた養分に、9割を頼って生きています。サンゴ礁が世界の海洋に占める面積というのはたった1%以下ですが、そこに海洋生物の約25%が依存して生きているので、サンゴが減少すれば、当然その生態系も失われてしまう。生きたサンゴは石灰質の骨格を作り、酸素も生成してくれます。サンゴがいなくなってもサンゴ礁は残るから防波堤になると思うかもしれないけど、それもどんどん壊れていきますからね」

2015年の研究施設周辺のサンゴ領域の様子。昔はもっと沿岸まで真っ黒だったという。