2022.02.10
# エンタメ

“暗殺”再び…『鎌倉殿の13人』が三谷幸喜史上「もっとも怖い大河」と言われるワケ

木村 隆志 プロフィール

大泉洋の好感度が下がるほどの冷徹さ

もちろん、三谷幸喜はただ怖さだけを描きたいのではなく、それを続く物語の原動力につなげている。

北条宗時が命を落とす直前、弟・北条義時に、「これはお前だけに言う。俺はな、実は平家とか源氏とか、そんなものどうでもいいんだ。俺はこの坂東を俺たちだけのものにしたいんだ。西から来たやつらの顔色をうかがって暮らすのはもうまっぴらだ。坂東武者の世を作る。そして、そのてっぺんに北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもな。だからそれまでは辛抱しようぜ」と熱く語りかけるシーンがあった。

それまで穏健派の性格で、源頼朝の挙兵に消極的な姿勢を見せていた北条義時が、兄の言葉によって心を決め、この時代を生き抜く怖さを身にまとっていくという今後の展開が推察できる。

源頼朝を演じる大泉洋/photo by gettyimages

ただ、その前に描かれるのは、源頼朝の怖さ。源頼朝には、平家に一族を滅ぼされて流罪になり、長く孤独な監視生活を送ってきたという暗い過去がある。

また、今後は坂東武者たちをまとめて勢力を増していくが、けっきょくは寄せ集め軍団であり、全面的に信用していたのは北条のみだったという。

源頼朝は平清盛を倒すためには坂東武者たちを頼るしかない一方で、坂東武者たちも頼朝を利用しようとしているところがあるなど、油断のならない関係だったのは間違いないころ。だからこそ今後は「大泉洋の好感度が下がるかも」と噂されるほどの冷徹さに、北条義時が戸惑うシーンが視聴者に怖さを感じさせるのではないか。

 

まだまだ視聴者の中には、『鎌倉殿の13人』を見慣れた戦国時代のような感覚で見ている人が多いだけに、おのずと「怖い」と感じる瞬間が増えていくだろう。

「一族を守るためなら人を殺すのが当たり前」「血縁があっても裏切りはありえる」という思考回路が理解できない人ほど、怖さを感じていくのではないか。史実にこだわる三谷幸喜は、当時が人々の道徳心が薄い時代であったことも忠実に描くはずであり、「理不尽」「無情」なシーンがあるたびにネット上をさわがせそうだ。

現在は周囲に振り回されてばかりであり、今後もしばらくは足並みのそろわない坂東武者たちの調整役として奔走する義時にも、身内で殺し合うなどのシーンが控えている。それらを単に「怖い」ではなく、どのように大義を見せ、感情移入させていくのか。脚本家にとっては腕の見せどころだろう。

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