「おいらはやくざな兄貴」と歌う『男はつらいよ』寅さんの仕事が「ブルシット・ジョブ」である理由

現代ビジネス編集部

もちろん、そのフロントのなりわいが、名ばかりで実質のないブルシットであることは大いにありそうです……「かたぎ」をフォーマルな金融会社の社長に据えるのだけれども、その社長に実質的な仕事はほとんどないとかです。

そういえば、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズのなかに「赤毛連盟」という有名な作品があります。あの話では、赤毛の人物求む、という赤毛連盟という謎の組織からの求人を紹介された赤毛の人物が、たくさん集まった応募者のなかから採用され、毎日午前10時から午後2時までの4時間、事務所にこもって百科事典をただ書き写すだけの仕事をするのですよね。実入りもとてもいい。

ところが突然、赤毛連盟は解散したとして事務所は閉鎖され、この人物は仕事を失います。相談を受けたホームズが捜査をしたところ、実は隣の銀行の地下金庫まで穴を掘るために、この人物を自宅から特定の時間、確実に追い出す必要があった強盗団の仕組んだことだった、というオチです。まさにこの赤毛の人物の仕事はブルシットそのものです。

いずれにせよ、やくざ組織の「社会貢献」は、「やくざ」という認識の裏返しでもあるのです。要するに、無意味な存在であることを認識しているからこそ、役に立つことを強調する局面もあるということです(災害時に「暴力団」がおこなう炊き出しなどが典型です)。

これはグレーバーがマフィアについていっていることとおなじです。かれらも最初はじぶんたちも社会になんらかの貢献をしているということをいいますが、しかし、基本的にはおのれの立場に率直です(とはいえ、グレーバーがいうように、これは大部分が「大衆文化」におけるマフィア/やくざ像からの推定なのですが)。

 

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