“ゲノム編集技術”でアレルギーのない昆虫を!
たくさんのメリットがある昆虫食ですが、多くの人が食べるようになる未来を見据えて、昆虫食のマイナス面を取り除こうという研究も始まっています。
30年前からフタホシコオロギの研究を行ってきた徳島大学は、6年前、昆虫食の研究に参入しました。助教の渡邉崇人さんは栄養価や生産効率の高いコオロギなど、多岐にわたる品種改良を行っていますが、世界に先駆けて挑戦しているのが、コオロギに含まれるアレルゲンの除去です。
「コオロギのネガティブ要因として、エビ・カニのアレルギーと同じアレルゲンがあげられます。これを除去しないかぎりは、全世界の人が食べられる状況にはなりません」(渡邉さん)

渡邉さんが、アレルゲンのないコオロギを作るため用いるのが「ゲノム編集技術」です。ゲノム編集とは、DNAの特定の場所をねらって切り、生物がもともと持っている性質を変化させる技術です。
渡邉さんの研究室では、編集を行う酵素をコオロギの受精卵一つ一つに注入します。こうして、特定の遺伝子が働かなくなるようなゲノム編集を行います。

しかし、アレルゲンの除去は容易ではありません。
原因となるのは、「トロポミオシン」というたんぱく質で、構成するアミノ酸のどこを変化させればいいかは、すでに突き止められています。しかし、トロポミオシン自体は生存に関わる重要な物質であるため、本来の機能を維持しつつ原因となるアレルゲンの部分だけを正確に編集するには、まだまだ研究が必要だといいます。
そこで、まずは低アレルゲン化し、誰もが食べられる昆虫を作れるよう、ひとつずつ着実に研究をすすめています。