2022.02.17
# マンガ

【SDGsマンガ】「未利用魚」を知っていますか? フードロスを学ぶ「小さな少女」の物語

大きなハンデを背負った小さな女の子の物語

SDGsという言葉が日本にも浸透し、テレビではSDGsに関する特集がたびたび組まれ、日々の生活でも意識することが増えてきたのではないでしょうか。

その中でも身近なものの一つ、フードロス。残さず食べる、商品棚の前の方からとるなど、身近なことから始めやすいアクションなので、意識せずとも活動できていることも多いと思います。

しかし、フードロスと一口に言っても理解しきれていない事が多いのもまた事実。未利用魚と呼ばれる魚をご存知でしょうか?

未利用魚とはサイズが小さい、処理が大変などさまざまな理由で市場に出回らずに捨てられてしまう魚のことを言い、これもフードロスの一種です。

魚の中でのマイノリティに属してしまっただけで、美味しく食べることができる未利用魚、人間が勝手に決めた規格に当てはまらなかっただけなのです。

なんだか人間の世界にも似た部分があるようにも感じます。

周りとちょっと違う部分があっただけでなんだか生きづらさを感じてしまう。

この漫画は、背が小さすぎるという自分にとっては大きなハンデを背負った主人公が未利用魚に出会うことで、自分らしさを取り戻す物語です。

第1話 ハツメ

主人公初芽(ハツメ)は秋田に住む背が小さな女の子。周りはさほど気にしてはいませんが、背が小さいということは本人にとって大きなハンデです。

実際、初芽が応募したアルバイトは、たまたま同じアルバイトに応募していた人が自分よりも背が高かったという理由で初芽は面接に落ちてしまいます。

自分の中身を見てもらうでもなく、ただ立たされて背がどっちが高いのかという判断基準で合否が分けられてしまいました。初芽はショックを受けつつも気分転換に映画を見に行くのですが…。

背が小さすぎて前の人に被ってしまってスクリーンがうまく見えず映画が楽しめない。

帰ろうと思ってバスに乗ったものの、揺れる車内の中背が小さいが故につり革が掴めず不安定な状況で出発。

背が小さくて前からズンズン進んでくる人の視界に入れないまま、初芽も避けきれず、もちろん向こうは避けてくれずにぶつかってしまう。

面接に落ちてしまったことを引き金に、今まで積み重なってきた背が小さいが故に自分に起きる不幸に支配され、どんどん気分が沈んでいってしまい、自分がこの世の誰からも見えていないちっぽけすぎる存在なのではないかと、思わずその場に倒れ込んでしまいます。

初芽が抱いていた東京に行って女優になるという夢も、元を辿れば背が低いから役も限られ、衣装も合わず、自分には向いていないんだと自信をなくして夢半ばで諦め、叶わずに秋田に帰ってきたのでした。

背が低いから自分の夢も叶えられないどころか、アルバイトも受からない、誰の目にも留まらない、自分はどこにも居場所がない存在なのだと考えます。

 

そこで初芽は改めて自分はこの世界で求められていない、マイノリティーな存在なのだと酷く痛感させられてしまうのです。

初芽はあまりの悲壮感に倒れ込んだまま大きあがれず、過去を思い出し涙を流します。

地面に倒れたまま動けずにいる初芽にどこからともなく光が差し、そちらに振り返ってみるとその光源である店のオーナーだと名乗る女性に声をかけられます。

そのオーナーにいきなり「寄ってく?」と話しかけられ、初芽は困惑しつつもその女性について行きます。

オープン記念ということで初芽にサービスをしてくれるというオーナー。

いったいここは何を振る舞うお店なのかと初芽が困惑していると、「決まったメニューはないの。その日とれた未利用魚だけをお出しします。」と綺麗にお皿に盛られた魚を初芽に出しながらオーナーは言います。

初めて『未利用魚』という言葉を聞き、初芽はポカンとしてしまいます。

オーナーはそんな初芽をみて、未利用魚は食文化や加工場の有無などさまざまな理由で流通に乗らない、市場に出回らない魚であることを教えてくれます。

たまたまその日出された未利用魚が初芽と同じ名前の『ハツメ』という魚で親近感が沸きながらも、自分と同じ名前の魚が未利用魚としり、モヤモヤしつつもあると「まずは食べてみて」とハツメのアクアパッツァを提供されます。

初めてみる魚に戸惑いつつも一口食べてみると、想像を超える美味しさに初芽は驚きます。

自分と同じようにあまりに小さい『ハツメ』という魚。その姿とは裏腹に圧倒的な存在感で、とても流通に乗らないマイノリティーな魚だとは思えないほどいい味を出しています。

オーナーは「本当の価値っていうものはサイズじゃ測れないものよ」と言い、ハツメの魅力を教えてくれます。

ハツメは初芽と同じように、サイズが小さいという理由で未利用魚にされてしまった魚。しかしサイズが小さいからといって美味しくないわけではありません。

スープに入れれば、その小ささから出るとは思えないほど旨みの詰まった出汁は周りの具材と素晴らしい調和を生み出します。

これこそがハツメの魅力であり、身長の低さに悩まされて可能性を潰してはいけないと初芽は気付かされます。

自分もこのハツメのように輝ける場所を見つけたい、夢を追い求めたいと改めて思った初芽。

同じ名前のハツメという魚のポテンシャルの高さに、自分もサイズの小ささに悩まされていたが、初芽だからこそ輝ける場所を見つけられるのではないかと勇気をもらいます。

オーナーに話しかけられ、我に帰った初芽は料理を口に詰め込み、自分の夢を再認識してオーナーにその夢を語ります。

いてもたってもいられず、料理を完食した初芽はもっと料理を食べていけばいいのにと言われていることにも気づかず店を飛び出し、街を駆け抜けて行きます。

自分にも輝ける場所があるはずだと意気込んだ初芽は自信に満ち溢れた表情を浮かべ、軽快な足取りで進みます。

当てもなく飛び出してはいたものの、清々しい気分のなか、また新たな可能性を感じられるニュースを耳にした初芽は今までのマイナス思考な初芽ではありません。

見方を変えればその人、その魚にしかない持ち味はたくさん出てきます。

人間だって未利用魚だって、たまたま誰かが決めた普通に当てはまっていなかっただけで、長所はたくさんあります。

今回の登場人物である初芽も未利用魚のハツメもサイズが小さいというハンデを追いながらも活躍する場所を見つけられました。

しかし、未利用魚は人間の手助けがないと市場に出回ることはできません。

まずは未利用魚という魚がいること、その魚にも美味しく食べる方法はいくらでもあることを知っていただけたら幸いです。

未利用魚を消費者の元へ届けるプロジェクトの一環として『SDGz(エスディージーゼット)プロジェクト』で行なっている『未利用魚MIRIYOUGYO DEBUT PROJECT』にて、先日『SDGsレストラン』が期間限定でオープンしました。

SDGsレストランは『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2021』の取り組みの一環として秋田県で漁獲された未利用魚をメインで提供するブッフェスタイルのレストランを東急プラザ渋谷6F GRAND SESSION内で実施し、未利用魚をモチーフにしたキャラクターを制作、ステッカー配布も行い、より未利用魚を身近に感じてもらうべくさまざまな施策を行いました。

秋田県に住むリアルZ世代の石井 秀樹さんご協力のもと、秋田で獲れた未利用魚を使用した料理が振る舞われ、絶賛の声をいただくことができました。
岸浩史/きし・ひろし
1976年、栃木県生まれ。広告代理店勤務。‘07年から「小説推理」(双葉社)で『夢を見た』の連載開始。著作に’11年までの連載作品をまとめた『夢を見た』がある。それ以降のエピソードは、双葉社文芸総合サイト「COULORFUL」で更新中。その他、怪談専門誌「幽」に連載した『むげん散歩』や、怪談漫画アンソロジー『幽コミック2』(MFコミックス)収録の描き下ろし作品がある。

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