2022.02.10
# 相続税

認知症の父を言いくるめた三男に、「3500万円」の遺産を「ネコババ」された71歳長男の悲劇

2通の遺言書から始まった「争続」

「わが家は大金持ちじゃないし、相続なんてまだまだ先のこと」と、油断してはいないだろうか。あるいは「生前贈与の制度を駆使してバッチリ対策済みだから、なんの憂いもない」と、慢心してはいないだろうか。

だが相続や贈与においては、たったひとつの些細なミスが一家崩壊の危機を招き、巨額の損失をもたらす。どんな家族であろうと、トラブルは平等に降りかかるのだ。

千葉県在住の渥美孝治さん(71歳・仮名)は一昨年、93歳で亡くなった父の震えた文字を前に、呆然とした。

〈妻と同居している次男に自宅を。妻と長男と三男は、預金3500万円を均等に分けてほしい〉

手持ちの資産を、妻と3人の息子にバランスよく分ける遺言書。日付は'19年12月、末尾に署名もされている。だが、印鑑が捺されていなかった。

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「長男の私が家庭裁判所に相談に行きましたが、『ハンコがないなら、残念ですが無効ですね』とにべもない。やっぱり遺産分割協議が必要か、と気が沈んでいるとき、第二の事件が起きました」

なんともう一通、遺言書が見つかったのである。

〈預金は全て三男に〉

渥美さんは目を疑った。確かに父の筆跡でそう書かれている。日付は'19年の8月。書式は整っているし、捺印もある。だが、内容が不自然だ。

渥美さんは直感した。父は3年ほど前から、いわゆる「まだらボケ」ぎみだった。三男はそこにつけ込み、タイミングを計って父を言いくるめ、自分に有利な遺言を書かせたのではないか……。

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