2022.02.11
# トヨタ

ここにきて、トヨタの「劣化」がはじまった…!「エース社員」退社のウラで起こっていること

井上 久男 プロフィール

人事改革の「真の狙い」

若手抜擢に人間力重視と、時代に沿ったいいことずくめの制度改革に見えるかもしれない。だが、額面通りに受け止めている社員は少ない。トヨタ元役員が指摘する。

「『若手抜擢』の大義名分は、まだ30代前半の大輔氏を抜擢しやすくするため。『人間力』なんて曖昧な定性的評価を導入したのは、章男社長やその側近の好き嫌い人事をしやすくするため。多くの社員がそれを見抜いて、白けている」

章男社長は近い将来、大輔氏の「ウーブン・プラネット・ホールディングス」をトヨタの基軸事業にしたいと考えているようだ。息子への「世襲」が念頭の人事制度改革ではないかと疑われても、仕方がないだろう。

社員のモチベーションを削いでいるのは、章男社長や側近の「好き嫌い人事」だけではない。「仕事の進め方もトップの思いつきでコロコロと変わる。それに合わせて目まぐるしく組織づくりと人事が行われるので、不満はたまる一方」(幹部)なのだ。

例えば昨年12月14日、章男社長が突然記者会見し、「'30年時点でのEVの販売目標台数を200万台から350万台に引き上げる」と発表したのが典型的だ。昨年9月までは200万台が目標だったので、わずか3ヵ月で「8割増」に大幅軌道修正したことになる。

これまで章男社長は「急激なEVシフトは産業構造を破壊し、雇用維持に影響する」と警鐘を鳴らしてきたが、その考え方を突然変えたように映った。現場からは「350万台を達成しろと言われても、電池の確保が見通せない」と、混乱する声が漏れ伝わる。

 

章男社長の変節には、11月4日に世界的環境保護団体「グリーンピース」が、「トヨタは大手自動車メーカーの中で気候変動対策に最も後ろ向き」と非難したことが影響していると見られる。

トヨタはハイブリッド車で世界一の技術力を持ち、「環境のトヨタ」のブランドを作ってきた。それが社長の「反EV発言」で崩れ始め、大慌てで軌道修正したのかもしれない。

トヨタの決算は好調だ。しかし好業績の理由は、半導体不足で新車供給が遅れ、需要と供給のバランスが崩れて値引き額が大幅に減少したことや、中古車価格の高騰で、ローンが終わって引き取った中古車を高く転売できていることが大きい。これについては、近CFOも昨年11月の決算発表で「実力以上の部分もある」と認めている。

組織の問題は、外部からは見えづらい。新聞報道や、近年トヨタが力を入れている広報メディアから見えるトヨタ像だけが、真の姿ではない。

『週刊現代』2022年2月12日号より

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