2022.02.13
# 宅配便

「送料無料」がドライバーも宅配便会社も苦しめる…改めて問う「送料」の価値

元ドライバーが明かす「本音」

新型コロナウイルスが蔓延する少し前、「宅配クライシス」という言葉が世間を賑わしたことがあった。

当時は際限のないノルマ、サービス残業は当たり前という過酷な労働環境で、ドライバー社員は疲弊しきっていた。そこで会社側は、こうしたドライバー社員の過酷な状況を世間に訴えることで世論を味方につけ、値上げを敢行した。

ちょうどその頃に宅配便業界を離れた私だが、あれから5年、現場はどう変わったのか?

「値下げ」がすべての始まりだった

そう遠くもない昔、現場では他社の伝票を剥がし自社の伝票に貼りつけるくらい荷物を取り合っていた。やればやっただけ稼げた時代。ライバル社同士がバチバチと火花を散らしていた。

ある意味、その時代が宅配便ドライバーにとって全盛だったような気がする。

Photo by iStock
 

それがいつしか、お互い荷物を譲り合うようになった。薄利多売、送料の適正価格が崩れ始めたのだ。営業で荷物を取れば取っただけ自分の首を絞めた。

2013年、佐川急便が宅配料金の折り合いがつかずAmazonとの契約を打ち切り、その後釜に入ったのがヤマト運輸であった。しかし、送料の問題や、Amazonの膨大な荷物を外部に再委託したことなどが思いの外、収支を圧迫し、配達ドライバーの疲弊ぶりに拍車をかけた。

そして荷主に対して値上げを踏み切るために、今までフタをしていたドライバー社員の過酷な労働環境を世間に訴えた。それが「宅配クライシス」であり、値上げ交渉の切り札としてヤマト運輸が仕掛けた戦略だと、私を含め現場にいる当時の社員は考えていた。

「労働環境は当時に比べれば良くなったと思います。宅配クライシス前は始発から終電までとかありましたが、今は出勤・退勤時間はしっかり管理されていますから、昔みたいにインチキ出勤、インチキ退勤はなくなりましたね」(都内勤務・大手宅配便会社Y社ドライバー)

残業が減らされ、収入が下がったと嘆いてはいたが、その表情に疲弊の色は感じられない。

このような声が聞こえる一方で、今なお必死にもがくドライバーもいる。

「人員や設備の環境が整っているところは、上手くいくと思いますが、うちみたいにそうでないところは無理やり休憩を取らされて、ケツを叩かれるように退勤させられる。その限られた時間内で、少ないキャパで回そうとするから毎日必死ですよ」(都内近郊勤務・大手宅配便会社Y社ドライバー)

同じ会社でも商流地域、住宅地域、または都心と地方で環境も事情も変わり、一緒くたにはいかないのだ。このような社内格差は埋まらないのが現状だ。

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