ツール販売で「87億円」儲けた業者も…オンラインゲームの「チート」がなくならない理由
オンラインゲームに「チート」があふれている。チートとは英語でcheat、イカサマとかインチキという意味。ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないことを、不正にできるようにする行為を指す。
「チーター(チートをする人)だらけだからゲームをやめた」という人がいるほどオンラインゲームにはチートがあふれており、運営会社が対応に追われている。
チートはなぜなくならないのだろうか? 成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。
「オレ最強」を味わうことができる
そもそも、なぜチートツールを購入するのだろうか。数千円から数万円を支払うだけで、ゲーム内でのストレスをすべてなくし、やりたい放題にプレイできるからと考えるとわかりやすいかもしれない。

ゲーム内通貨やレアアイテムを不正に増やしたり、キャラクターのスコアやステータスを急激に上げたりできるため、有利にゲームをプレイできるようになるのだ。
バトルロイヤルゲーム『Apex Legends』にも、チートが多いことがよく指摘されている。その一つ「オートエイム」は、エイム(自分の銃や武器の照準を敵に合わせること)を操作せずとも敵に照準が合うというもの。「ウォールハック」は、壁の後ろにいる敵がわかるというものだ。その他、高速移動ができたり、一瞬で回復できたり、宙に浮いて高いところから攻撃できたり、無限にライフルにチャージできたりするものもあり、やりたい放題だ。
「マジかってくらい遠くから確実に撃ってきて、あんな強いのは初めて見た。これがチートかと。あんなのに勝てるわけない」と、『Apex Legends』でチートを見かけたという20代男性はいう。
「でも、あれだけ無双できるなら気持ちいいだろうなと思った。チートして垢BAN(アカウント停止)されたくないし、やらないけど……」
試しにあるチート動画を見てみると、壁の向こうにいるプレイヤーの姿が違う色で強調表示されて見え、壁越しでも撃つことができていた。確かにこのようなチーターがいたらかなうわけはないし、撃たれた側は対処できないだろう。逆に撃つ側から見ると、万能感を感じられ、気持ちがいいのかもしれない。
このような相手がいるゲームで強くなるためには、気が遠くなるほどの時間が必要だ。しかしいくらかのお金で即座に、しかも圧倒的に強くなれるとしたら、その誘惑に抗えないユーザーもいるだろう。
圧倒的強さで有名になったり、称賛されたい。承認欲求を満たしたい。そのためには多少のズルをしてもいい。なぜなら「買える」のだから。それは、SNSで「いいね」やフォロワー、再生数を買う行為と根っこは同じなのではないだろうか。