技術は補助金より強し
中国が日本に対して、輸出入制限や禁輸措置、あるいは関税引き上げなどの措置をとってくる可能性は、もちろんある。
中国は貿易管理法によって、輸出管理規制を強めるかもしれない。とりわけ問題なのは、レアアース(希土類)の輸出が制限されることだ。
「レアアース戦争」は、実際に起こった。2010年9月に尖閣諸島で中国人船長が日本海上警察に逮捕される事件があり、その後、中国からのレアアース輸出が規制されたのだ。
日本は、これをWTOに提訴した。そして、協定違反の判決を引き出した。
このときの日本の対応は、WTO提訴だけでなく、もっと積極的なものだった。日立製作所やパナソニック、ホンダなどは、都市鉱山(既存部品の廃品)からの回収やリサイクルを行なった。さらに、より少ないレアアースで性能の良い製品を開発した。
これによって、日本の中国レアアースへの依存度は、2009年の86%から2015年には55%まで低下した。レアアースの価格が急落したため、中国のレアアース生産企業は赤字に陥った。こうして、レアアース戦争は、日本の勝利に終わった。
「ペンは剣より強し」とは、19世紀イギリスの小説家・政治家のリットンの言葉だ。
「言論の力は、政治権力や軍隊などの武力よりも民衆に大きな影響を与える」という意味だが、これをつぎのように解釈し直すこともできるだろう。
それは、どんなに強力な武器を持つよりも、強い技術力を持つことのほうが重要ということだ。
レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ。