注射を克服できて、本人もうれしかった

オミクロンの感染拡大が止まらない――。

幼稚園、学校といった集団生活を伴う施設でも感染が広がり、臨時休園・休校が相次いでいることから、親たちの生活にも影響が出ている。

感染予防として、第3回目のワクチン接種が再開され、5~11歳へのワクチン接種も3月から開始される見通しだ。しかし、ワクチンが打ちたくてもスムーズに対処できず、医療行為自体が難しい人もいる。たとえば、発達障害や知的障害を持つ人たちだ。

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「だったら無理して打たせなくてもいいのでは!?」と思う方もいるだろう。しかし、発達障害を持つ人の中には、基礎疾患を持っている人も多い。新型コロナに感染した場合の重症化リスクは高いとされ、アメリカではワクチン接種が強く推奨されており、重度発達障害の人は優先接種になっているという。

「娘はとにかく注射が嫌いで嫌いで、全身全霊で拒否し続けてきました。必要な医療行為を受けようにもままならないことが多く、10年以上注射ができませんでした。ですが、今回はコロナワクチン接種ができたのです。接種してみてわかったのは、娘本人も本当は、できるようになりたいのだということ。接種後の娘の満足気な表情は、今も忘れられません。周囲の人たちの発達障害への理解と、惜しみない協力のおかげで、不可能だと思っていたことが可能になったのです」

アメリカ・ボストン在住で日英バイリンガル幼稚園の副園長を務める落合典子さんは、重度の自閉症の娘の那奈さん(現在32歳)のワクチン接種のことを、こう振り返る。長年悩み続けた「注射ができない」という相談を受け、典子さんにアドバイスし続けたのは、アメリカ・マサチューセッツ総合病院で小児精神科医の内田舞医師だ。

前編「注射恐怖症なのに…発達障害をもつ32歳の娘、ワクチン接種への「医師とのタッグ」」では、那奈さんが注射嫌いになった経緯から、コロナワクチン接種に成功し、那奈さんが満足気な表情を見せるまでのいきさつについて、典子さんに語っていただいた。後編では、コロナワクチン接種を受けるにあたり、困難を抱える人たちを支援することの意味や必要性について、典子さんと内田医師、それぞれの想いを聞いた。

母親の典子さんとふたりのお兄さんといっしょの那奈さん(中央)。写真提供/落合典子