5年経った今も治療はなかなか進まない

私が治療を継続的に行けるようになったのは、つい5ヵ月ほど前。いい加減自傷行為を辞めないと本当に危険という状況になり、やっとここまで漕ぎ着けられた。Aからの性被害を受けてから、既に5年以上の時間が経過している。とはいえ、治療のセッションを始めてもすぐに解離してしまうので、まだまだ時間がかかる。

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まずは、「安全」「安心」「幸せ」がどういう感覚なのかを学習し、そういうポジティブな感覚でいる自分を許し慣れる練習を積み重ねている。そして「いやだ」「苦しい」「怖い」そういった感覚を感じ、伝えられることが必要で、今少しずつ、自分の感覚の器を広げている状況だ。気が遠くなる作業だが、やるしかない。

ただ、自分の気持ちをダイレクトに感じられるようになると、今まで「解離」で何も感じずにできていたこと、やり過ごせていたことが、どんどんしんどくなっていく。結果的に、心掻き乱される対象が増え、これまで以上に起き上がれないほどの気持ちの落ち込みや疲労感に襲われている。一度崩れた心のバランスは簡単には取り戻せないことを実感する日々だ。それでも私は、トラウマ記憶や当時枷せられた無数の鎖から自由になりたくて、自分らしく呼吸できることを証明したくて、今日も治療を続けている。

性暴力はよく「魂の殺人」と言われる。確かに私自身、自分がレイプされた場所を、自分のお墓のように感じている。しかし同時に、「私の未来まで、人生全部まで殺されてたまるか」という思いがある。もう、なんとかして生き続けるしかないのだ。

「性暴力がどれほど人を傷つけるのか」

この問いに対する答えが、あまりに長い回答になってしまった。もちろん、トラウマやそれによる反応・症状、適切な治療法はひとそれぞれ異なるため、私が受けている治療がすべての方に当てはまるものとは限らない。

性暴力の加害者にとっては、時間が経てば忘れてさえしまうような一瞬の快楽なのかもしれないが、被害者にとっては、何年にも渡って地を這うような苦しみを経験することも知って頂けたらと願う。そしてもし、あなた自身が性暴力の傷で苦しんでいるのなら、互いになんとか生き延びて、時間がかかっても、「私たちは強い」ということを一緒に証明しようと、願いたい気持ちでいっぱいなのだ。

治療を続けながら自らの体験を書くのも大事な作業になっているという桑沢さん。性被害者への不理解をなくすために書き続けたいと話す。photo/iStockk