性暴力をただの「セックス」と捉える人たち

「そもそもなぜ性暴力はいけないのでしょうか?」
以前、性的同意や性暴力についての記事を作るために、複数の人にインタビュー取材をしていたとき、こうたずねられ、なんだか途方に暮れて、言葉に詰まった記憶がある。

私は、過去に性暴力を受けたことがある被害者だ。その出来事については、以前記事に書いたこともある。

そもそも大前提として、性暴力は重大な人権侵害であり、許されない行為である。その上で当事者として理由を付け加えるとすれば、被害者のその後の人生には、適切かつ粘り強い治療が欠かせず、それなしには死にたい思いが影のようにずっとつきまとい、非常に生きにくくなるからである。

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しかし、ふと思う。性暴力もただの「セックス」と捉えてしまう人にとっては、「セックスごとき」でどうして傷つき、その後もどう長く苦しむのか、理解や想像ができない人もいるのかもしれない、と……。私の加害者も、そんな理解がない人間のひとりだった。

まだ高校生の私に長期間性暴力をふるった加害者(以下Aとする)は、最後はストーカーになり、そのため逮捕された。しかし、ストーカーはいきなり逮捕されるものではなく、警察から段階的に「警告」や「接近禁止命令」を受ける。それを無視して接触を続けると逮捕されるのだ。Aは「警告」を受けたのちにも、私を待ち伏せして、警察への相談がいかに愚かな選択かを諭しにやってきた。その際言い放ったのが、「(犯罪歴がつくなんて)高い買いもんしちまったよ」という言葉だった。

桑沢さんの加害者のAは、ストーカー行為も起こしている。photo/iStock

この言葉はAだけが使ったのではない。私との関係を話していたというAの学生時代の同級生も、警察に訴えられたことを話すと、「高い買い物」という言葉で、笑ってAに同情したというのだ。弁護の意味も込めて書くが、金銭の授受などは一切ない。

さらに、私は当時受験生で勉強が忙しく、親も心配症で外出は困難だった。そんな高校生の私に対し、「会える時間が短すぎる、お前は風俗嬢以下だ」と罵倒し、「自分と会う時間を作ろうとしないお前はダメ人間だ」と恐怖に陥れ、「Aからは逃げられない」という一種の洗脳状態が作られたのだと思う

それでも父親のいない私にとって、Aは小学生の頃から父のように頼っていた存在という側面も持っていた。家族ぐるみで知っている間柄ということもあり、家族にも相談できず、逃げられない状況になっていた。大学に進学することだけが確実にAから逃げられる道と思っていた。Aから性被害を受けながらも、家族を傷つけないこと、無事に学校に通えることだけを考え、瞬間瞬間を生き延びることしか、当時は思いつかなかったのだ。