(7)頭脳流出で人材の焼け野原
国内外で風当たりが強まる習近平政権に愛想をつかして、国外脱出を企てる人材も増加している。中国事情に詳しいジャーナリストで、千葉大学客員准教授の高口康太氏はこう分析する。
「中国政府は『共同富裕』(みんなで豊かになる)をスローガンに、大手IT企業を儲けすぎだとして叩いています。ポピュリズムを背景にした上手なやり方かもしれませんが、叩かれるほうからしたらたまったものではない。見切りをつけて海外へ行ってしまう、優秀な社員も多いでしょう。
また、オンラインゲームが若者を腐敗させるとして、昨年からゲーム会社も批判の的になっています。昨年の7月以降、新作が1本も出ておらず、1万4000社が倒産したと言われています。こうした流れが続けば、優秀なIT人材を国内に引き止めることはできなくなります」
中国から逃れて日本に来たエリートは「『内巻』に疲れた」と口を揃える。姫田氏が言う。
「『内巻』とは無駄な競争を意味します。若者からは『上司のヨイショや無駄な徹夜作業がバカバカしい』というグチをよく聞きます。企業間競争も激しく、一つのヒット商品が生まれれば、次々と同じような商品が発売され、すぐに供給過剰になってしまう。果てしない競争に巻き込まれることを嫌って、海外脱出を希望する学歴エリートの若者が多い」
優秀な頭脳は海外へ流出し、国内に留まらざるを得ない若者は無気力に苛まれていく。これでは衰退していくばかりだ。
北京五輪では、コロナによる各国選手の調整不足もあり、中国はメダルラッシュに沸くだろう。しかし、祝祭が終われば、7つの危機が明るみになる。北京五輪は中国最後の輝きになるだろう。
『週刊現代』2022年1月29日・2月5日号より