一方、同じ食品メーカーでも、商品数の少ないところが多くあります。商品数は企業間で結構な違いがありそうだということが、検証の事前から予想されました。
実際、約1万社について商品数を調べると、商品数トップの企業は6703個の商品をもっています(表)。最下位企業の商品は二個なので、ここに大きな格差があるのは一目瞭然です。丁寧にみると、上位10社で全商品の9%、上位100社で全商品の57%を占めていることがわかります。つまり、過半の商品が全体の1%の企業に集中するという格差が存在するのです。

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企業間で売上や従業員数に大きな格差があることは常識的にもわかることですが、経済学の研究では、これら売上や従業員数は、「ベキ分布」という非常に裾の厚い(ファットテイル)分布に従うことが知られています。そして、商品数もこれらと同じベキ分布に従っていることが確認されました。

物価の上下は大企業の責任?
さて、この二つの事実はどのような意味をもつでしょうか。それを考える手がかりになるのが、『物価とは何か』でも紹介している「トルンクビスト指数」という物価指数です。この指数は、個々の商品の価格変化率を足し上げる際に、その商品の売上金額シェアを重みとして使います。だから、自社製品の売上金額シェアの高い企業は、それだけ経済全体の物価への寄与も大きくなります。
では自社製品の売上金額シェアの高い企業とはどういう企業かと言うと、第一の事実からわかるように、たくさんの商品をもっている企業です。また、第二の事実は、商品数は企業間で大きな格差があるということでした。
ここから、非常に大きな商品数をもつ、ごく少数の企業が全体の物価の動きを支配しているのではないか、という予想が立ちます。逆に言えば、商品数の少ない企業――大多数の企業はこれに当てはまるのですが――は売上金額シェアが小さいので、全体の物価の動きに及ぼす影響は限定的になるはずです。