2022.01.31
# 科学

遺伝子を自由に書き換えられる、「遺伝子ドライブ」技術の“過大なリスク”

生物種が絶滅するかもしれない…

無数の惨劇を生んできた優生思想

差別的な言動や凶悪事件があるたびに、その背景にある考え方として「優生思想」という言葉が非難の意味を込めて使われる。

優生思想とは、一言でいうと、人間の優劣は生まれつきのものであって、「優秀」な人間に生きる価値はあるが、「劣等」な人種や障害者には生きる価値がないとする考え方だ。

これは、19世紀に、当時の進化論や遺伝学から生まれた「優生学」――ある人種の遺伝的な質の改良を目指す学問(現在では否定されている)――をもとにしている思想である。

とくに問題となるのは、「劣等」な人々は生まれつきの「劣等」な遺伝子を持っているはずだから、そうした人々は生まれる価値も生きる価値もないという差別的な考え方につながるからだ。

日本で1996年まであった旧「優生保護法」は、不良な子孫の出生を防止するという優生思想に基づいて障害者に強制的な不妊手術をすることをみとめる法律だった。

現在では、不妊にさせられた被害者の裁判提訴をきっかけに、救済制度の整備や実態調査が行われつつある。

また、20世紀前半のナチスドイツの時代には、障害者は「生きる価値のない生命」として強制的に安楽死させられていたことも知られている。

20世紀前半のドイツで優生思想に基づく政策を進めたアドルフ・ヒトラー[Photo by gettyimages]
 

こうしたことは、現在では、障害者差別に由来する非人道的な犯罪とされている。

だが、医学技術の進歩に伴って、倫理的に微妙なボーダーライン上の行為も出現している。

その一例が、産科医療で、胎児に対して行われる出生前診断や不妊治療での着床前診断(胚を子宮に移植する前の診断)である。

その結果によって選択的に妊娠中絶することを前提とするなら、最終的に「障害者を生まない」事態へとつながってしまうという懸念があるからだ。

そのため、優生思想を強く批判する人々は、出生前診断を利用した選択的な妊娠中絶のことを「新優生学」と呼ぶこともあるくらいだ。

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