いま世界中が注目しているアメリカのインフレをどう考えればいいのか?世界経済全体にどのような影響があるのか? 財務省・IMF・世界銀行などで活躍され、『教養としての金融危機』を上梓した宮崎成人さんが解説します。
現在、世界中の目がアメリカのインフレ動向に向けられています。昨年12月の消費者物価指数(CPI)の前年比は7.0%上昇と、1982年6月以来の高い水準でした。
アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、今年中に複数回の利上げを行うと予想されていますが、それがアメリカ経済、ひいては世界経済全体に与える影響については、いまだにコンセンサスが得られていないようです。
ここでは、国際金融危機の可能性、という観点から、アメリカのインフレと利上げについて考えてみたいと思います。

インフレ高進の「5つの理由」
まず、そもそもどうして現在予想を上回るペースでインフレが進んでいるのでしょうか?
その第一の理由は、エネルギー価格の上昇です。
欧州で風があまり吹かずに風力発電量が伸びなかった、天然ガスの在庫が減っていた、特に寒い冬となった、といった要因に加えて、そもそも地球温暖化対策のために石炭・石油・天然ガスなど化石燃料の生産設備への投資が減少したため、需要増に応じた増産ができませんでした。
最近では、ウクライナを巡るロシアと欧米との対立が仮に対ロ制裁や武力衝突につながると、ロシアからの石油・ガス輸出に影響するとの懸念もあります。