一番大変なのは献立を考えること
私の仕事の中で、一番大事で一番頭を抱える仕事は毎月の献立を考えることです。
もしかしたら、上質な食材選びをするよりも大変な仕事かもしれません。
付き出しから始まり、最後のデザートまで10品ほどで構成するのですが、どうしたらお客様が喜んでくださるか、いつもその一点に向かって頭から血が出るほど考えています(笑)。
日本料理が日本料理であるために、ただおいしいだけでは駄目で、毎月毎月の行事や節句、その季節に合った器選び、お部屋の掛け軸、花入れや箸置き、お膳など、お料理の献立はもちろん、全てトータルコーディネートで考えなければなりません。

献立作りはある意味、シナリオ作りと一緒です。
少し大げさですが、ドラマや映画、小説や音楽を作るのと似ているのではないかと思っています。
例えば、小説やドラマでも、最初に殺人事件が起きて犯人を探し当てていく流れや、途中で殺人事件が起きて犯人を追跡する流れ、最後に殺人事件が起こり犯人の動機を知る流れなど、シナリオは、様々な意図があって作られています(笑)。
日本料理の献立は殺人事件とは大きくかけ離れていますが、音楽に喩えるならば、どこかは静かで優しいクラシックのように流れ、どこかは強く激しいロックのように攻め立てるような山あり谷ありの物語を作るべきではないかなと思っています。