2022.02.10
# 飲食
「日本料理にメインディッシュはない」銀座の「世界的料理人」がそう語るワケ
一つひとつが大切な「物語」の要素東京・銀座の割烹「小十」をはじめ、パリ、ニューヨークにも出店するなど、日本料理の旗手として世界的に活躍している奥田透さん。著書『日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』は、プロフェッショナルならではの美学と仕事論がたっぷり詰まった一冊だ。知っているようで知らない、日本料理のこと。「日本料理にメインディッシュはない」と語る奥田さんが、その神髄に迫る。
西洋料理をなぞる必要はない
西洋料理にはメインディッシュがあります。
それは、ほぼ肉料理をさします。

逆に言うと、それまでの食事はそのメインディッシュを食べるためにいただくもの。昔は肉料理を食べる前に、口直しのシャーベットまで出していました。メインディッシュというのはそれだけ偉大なるものなのです。
一方で日本料理にはメインディッシュはないと思っています。しかし最近では私のお店にいらっしゃるお客様の中にも西洋料理に慣れていて、私の出す日本料理の中で、どれがメインディッシュかと聞いてくる方が結構いらっしゃいます。

すると答えに悩みます。
なぜ悩むのでしょうか?
煮物も鯛のお刺身もいい食材です。炭火で焼いた魚料理も十分にメインのような気がします。しかしだからと言って、これが今日のメインだと言えるものはやっぱり日本料理にはないのです。
そもそも日本料理がそういう仕組みになっていないからです。
私の店では、付き出しに始まって、10品ほどの料理をつないでいく料理が日本料理だと思っています。
同じ日本料理の料理人でも、煮物碗やお刺身がうちのメインです、とか、焼き魚がメインです、という方がいるかもしれませんが、私の中では、いずれの料理に対してもそういった位置づけをしていません。
そもそも西洋料理をなぞる必要はないからです。
日本料理の献立は、日本料理の独特の価値観をしめせれば、それでいいのだと思っています。