ジャカルタからジャングルへ…インドネシア「首都移転狂騒曲」に潜む現実的な問題点

大塚 智彦 プロフィール

国費で賄えない建設費用

国会で可決成立した「新首都法」では、12条第1、2項で、新首都ヌサンタラを特別地方政府として従来の州や県とは異なる特別の地位、権限を付与するとしている。

その特別権限として首都移転に伴う「準備・建設・移転」の経費に関して「サポートエリア建設などを支援する個人の投資、許認可、ビジネスに便宜、財務上などのインセンティブを与える」との権限を有するとしている。

要するに、首都建設に関わる費用を負担する個人などに特別配慮をするというもので、費用負担に「付帯特権」を公然と与えることを示したものとして注目されている。

ヌサンタラ国家首都のHPより
 

こうした特権を公にしなければならない背景には、深刻な財政上の負担がある。

開発に伴う財源に関しては、試算で466兆ルピア(約3兆7000億円)が少なくとも必要とされているが、財務省は国家予算だけだは賄えず官民、内外の投資に頼らざるを得ないとして不安を抱えているのが現状という。

政府は首都建設に伴う財政負担に関しては、466兆ルピアのうち19%を政府が拠出し、残りを官民連携事業、民間投資で賄うとしている。

新首都には主に政治機能に関わる省庁、機関の移転を予定しているが、金融関連機関やビジネス拠点など経済の中心は現状のままジャカルタに残すとしている。日系企業約1600社をはじめ各国企業が新首都への移転には消極的であり、各国大使館も現状ではジャカルタの残る可能性が高いという。

こうした状況でどこまで内外の民間投資が集まるのか疑問視する声も出ており、投資への「特権付与」に期待せざるをえない側面があるといえる。

一部メディアはこうした財政の裏付けがあいまいな状態で、首都移転が政府主導の「夢の実現」という楽観的ムードで進むことに警鐘を鳴らしている。

首都移転に関する世論調査では、全国平均で約36%が「賛成」なのに対して、約40%が「反対」を表明している。さらにジャカルタ市民に限ると、約96%が「反対」との結果が報告されている。

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