2022.01.29

さだまさし、かぐや姫、荒木一郎…「学生街の喫茶店」で流れていた、昭和の名曲

週刊現代 プロフィール

そんな苦境に立たされた三田さんを支えてくれたのが、恋人の存在だった。彼女は大阪府立大手前高校の同級生。高校卒業を機に、同じタイミングで上京していたのだ。

「彼女ともよく一緒に喫茶店へ行きました。ふたりともおカネなんて全然持っていない。一杯100円ほどのブレンドコーヒーを頼み、何時間も過ごした。そんなときにも、『イムジン河』が流れていました。

そのうち、私は彼女と暮らし始めました。あの頃はおカネがなく、一緒に住んだほうが経済的だったんです。当時はそんな理由で同棲する恋人たちが多かった。まさに、かぐや姫の『神田川』の世界です。

彼女とは、大学3年生で学生結婚をしました。それが今の妻です。大学の卒業間近に妻の妊娠がわかり、僕は慌てて東京玩具人形共同組合に就職しました。その後も僕は小説を書き続け、4年後にようやく『僕って何』で芥川賞を受賞することができた。今となっては、大切な人と過ごした喫茶店での時間は青春の一ページです」

かぐや姫『神田川』かぐや姫『神田川』
 

もちろん、学生街には叶わなかった恋の記憶も付き物だ。

エッセイストの和田由美さん(72歳)が語る。

「私は札幌にある藤女子短期大学に通っていました。当時の札幌は北海道大学のある北大通りを中心に学生街が形成されていて、喫茶店が軒を連ねていました。通り沿いにある『ライフ』に『左文字』、『コンサートホール』……いま振り返っても懐かしいです。

私は英文科に通いながら、北大と合同の放送研究会に所属していました。毎週、放研の定例会が終わった後にみんなで喫茶店に繰り出しました。あの頃の喫茶店ではフォークから歌謡曲、クラシック、いろんなジャンルの曲が流れていた。その中でも私が好きだったのが、荒木一郎さんの『空に星があるように』('66年)でした」

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