人体と同じように、カニの身体でも、傷口ができると血液が固まって「かさぶた」ができる。だが、傷口が大きければ侵入する細菌を防ぎきれず、やがて死に至る。
カニにとって水底を歩くことは、まさに命がけだ。そのため水底に接する爪の殻は特別に厚く、丈夫になった。さらに接地面積が少なくて済むように、爪は細長く、鋭くなっているのだ。
ちなみにカニの脚が長くなったのも、同じ理由だ。上からくる外敵に対応するために、カニは身体の上部を硬い殻で覆った。だが、腹部の殻は硬さが劣るため、危険な水底から最大の弱点であるお腹を遠ざけようと長い脚を手に入れた。
長い脚と鋭い爪。カニたちの進化の歴史を思いながら、あの美味を堪能しよう。(桜)
『週刊現代』2022年1月29日・2月5日号より