出勤することが自分にとってはリハビリになった

会社に行って、デスクに座っているのがつらい。

「体重も10キロ近く落ちていたので、なんかみんなが遠巻きに私を観察して、バカにしているように感じました。ほぼ1年近く、人目を受けていなかったから気になってストレスになる。不安でお酒が飲みたくなったこともあったのですが、祖母の『酒は魔物。日が落ちてから』の言葉が再び蘇り、怖くなり必死で耐えました。

そもそも、私は人目を気にする。酒臭いと思われたくないし、まともな人だと思われたい。出社してしばらくの間は、人目に付かないように、つらくてトイレで休んだり、泣いたりしていました」

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我慢する期限をまずは1週間と決め、1日ごとに「今日もやり切ろう」と通勤を続けたという。最初はデスクに座っているのもつらかったが、1週間、2週間と少しずつ、楽になっていった。

「最初は本当につらくて、仕事をやめたほうがいいのかも、と真剣に思いました。でもやはり、私にとってのリハビリは、仕事だったのだと思います。『これ、詳しかったよね』とか『あのクライアントって、前に担当していたっけ』など、会社にいれば質問が飛んでくる。『必要とされている』という実感を得つつ、社内の友人などとも交流するうちに、少しずつ会社に行くことが苦にならなくなっていきました。激しい尿漏れも、1カ月程度でかなりマシになりました」

今は酒量はかなり減ったという。

「完全にやめようと思ったこともあったのですが、通勤していると、体力を使うのか帰宅すると疲れて眠くなるので、自然と深酒しなくなりました。出社になってから今ちょうど2カ月ですが、体重も少しずつ元に戻っています。

でも、体力はまだ不安があります。それに、疲れると血尿が出ます。これはちょっと心配です。あと泥酔して歯も磨かず眠る生活を続けていたので、虫歯がひどい。それらをきちんとメンテナンスをしようと思った矢先、再びオミクロンが蔓延してしまい、病院に行きにくいなぁと悩んでいます。

そして、また社内でも感染者が出て、リモートワークする人も出ています。ですが、私は可能な限り出社を続けたいと思っています。現時点では飲みすぎることはしていませんが、完全に治ったとは思っていないことも理由のひとつです。リモートになるとまた、沼に堕ちてしまうに違いないと思っています。本来はきちんと治療をしたほうがいいのかもしれませんね。今回、自分の中にある、アルコ―ルに嵌ってしまう因子に気づくことができました。その沼に嵌らないように、これから先もちゃんと考えながら生きていこうと思っています」

仕事をし、頼られることが碧依さんの気持ちを取り戻すことになったという。photo/iStock
※取材内容はあくまでも、お話を伺った小野碧依(仮名)さんのケースです。アルコール依存は、アルコール外来などの専門医の指導のもとケアしないと症状が解消しないケースも少なくありません。自己判断せず、飲みすぎている、やめられない、つらいと思ったときには、専門医に相談をしてください。