言葉に表現できないリモートでの不安感

リモートワークで仕事をしている解放感と孤独……。不安を解消する手っ取り早い手段として、お酒に手を出し嵌ってしまった碧依さん。しかし、アルコールが手放せなくなった理由は、それ以外にもあった。

「オフィスで隣の席だった後輩が、会社からのリモート要請を無視して出勤していたんです。上の人は、リモート推奨といいながらも『そうはいっても出社するヤツがエライ』みたいなところがありました。後輩はプリントアウトした書類や資料、展示会で集めたサンプル等々を、リモートで不在の私の机に積み上げていったんです。私が出勤すると、『あ、ごめんなさい』と、悪びれた様子もなく片付けるんです。

わかりにくい感情かもしれませんが、自分のデスクはリモート中であっても私のスペース。自分のスペースが侵食されるって、ホントにショックなんですよ。なんかいないものにされているみたいで腹が立ちました。

でも、私には密かに酒を飲んでいる負い目がある……。そんなマイナス点がある状態で積み上げられた資料を見ると、自分がものすごく責められているような気がして、ものすごくストレスが溜まるわけです。そして、また飲みたくなってしまう……。もう、悪循環の極みです」

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ところで、自宅での仕事はどのように行っていたのだろうか。

「朝10時始業なので、オンラインの出勤ボタンを押す。コロナ禍とはいえ、プロジェクトは3本くらい回っており、私の場合は、建築関連のちょっと変わったプロジェクトなどを担当していました。

意外とリサーチすることはたくさんありました。その企画を立てたり、企画をまとめたり。あとはメールの返信などの雑務や、広告効果のまとめなど。こう書くと飲みながらでもきちんと仕事をしている風に思うかもしれませんが、コロナ前に比べると、圧倒的に仕事量としては少ない。それでも従来と同じ程度の給料が支払われます。

コロナ禍に生活が担保できているのはとてもありがたいことでしたが、仕事をしている充実感のなさと、スキルが磨かれない感覚、人との情報交換もないので、自分が置いて行かれている感が強くなり、焦りと不安がすごかった」

会社にいれば、周りの状況を見たり、気軽に相談したり、時にはグチを言ったりアドバイスをもらったりできる。しかし、家ではひとりだ。

オフィスでの仕事と違って、相談もできず、視野も狭くなってしまう。慣れない仕事環境で不安が募っていったという。pnhoto/iStock

「クライアントからリモートで理不尽なことを言われると、対面で言われる以上にガツンとくるんです。そんなとき、会社なら『あんな言い方しなくてもいいのにね』などと、周りでフォローしてくれる人がいる。

また、企画書の方向性はもちろん、データの切り口ひとつとっても『これでいいのかな』と聞ける人が、リモートだといません。与えられた仕事をこなすのではなく、『刺さる』ものを見つけ、企画し売り込むことが仕事だったので、気軽に聞ける人がいないと不安になってしまうんです」

人脈もオンラインでは広がらない。対面すれば、相手になんとなく覚えてもらえるが、オンラインではお互いにスルーするどころか、記憶にも残らないこともある。