沼堕ち――。

一見浅いと思っていた水面に足を踏み入れる。いつもと違う感覚!? なんて思っていると足場は徐々に不安定になり、気づいたときには、膝まで腰まで、胸元までとあなたを沈めていく……。そして、底がわからない沼から抜け出すのは、難しい……。

10年以上、女性の「実は私は……」という告白を聞き続け、『不倫女子のリアル』『貧困女子のリアル』 などの著書もある沢木文さんは、そんな沼堕ちする女性たちに数多く接してきた。

「コロナ禍になってから、孤独感や不安感などからさまざまな沼に堕ちる人たちが増えていると感じる」と沢木さんは言う。前に、「ホスト沼」「美容整形沼」などにハマった女性たちの告白を寄稿してもらったが、今回の告白は、「アルコール沼」だ。何度かの緊急事態宣言に伴うリモートワークで、アルコール沼に沈んだという小野碧依さん(仮名・32歳・IT関連会社勤務)は、その恐怖を振り返る。

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「飲めてノリがいい」で契約が取れた新人時代

碧依(あおい)さんは、都内私立大学卒業後、新卒でIT関連会社に入り、勤続10年。実家は川崎市内にあり、都内で一人暮らしをしている。もともとお酒は好きだったが、「家飲み」はあまりしないタイプだった。

「大学時代から飲み会などは積極的に参加していました。就職してからはずっと企画営業で、“飲めてノリがいい”というだけで、契約がとれることもぶっちゃけると多かった。“奇跡の新人”なんて言われて、悦に入っていた時期もありました。

クライアントさんの中には『碧依を呼べ』と言ってくれる人もいて、芸者さん気取りで『碧依奴でありんす~』なんて盃を重ねたりして。『姐さん、お座敷だよ』と同期からLINEが入ると、ご指名参上とばかりに、夜中にタクシーを飛ばして自宅(品川区)から恵比寿まで行ったこともあります」

飲めてノリがよかった碧依さん。クライアントから指名を受けることも多かった。photo/iStock

ノリが良くて明るい自分が好きだった。しかし、それから数年経って潮目が変わった。企業のパワハラやセクハラが問題視されて、いわゆる“女”を使う営業がコンプライアンス的にしにくくなった。

「データを使い、仮説を立てて、戦略を組み上げていく企画営業が主流に大きく転換していきました。私は空気を読むのも早いというか、このままではヤバいと思いました。すぐにMBAっぽいことが学べるビジネススクールに通って、『箔付け』に動き出しました。そのためにウェブ解析士資格や、知的財産管理技能士資格(3級・2級)も取りました。

でも、企画営業ってノリで考えるようなところがおもしろかったし、それが勢いにもなっていたのに、数字で固めていくからつまらないんですよ。悪ふざけもできないし……。そんな数年を過ごしているうちに、コロナでしょ。私の仕事は、人に会うのが身上。人に会えないコロナで、人生もキャリアも終わったような気がしました」