恐怖を恐れていたら、新しくて面白いものにも出会えない

人が成長し、社会化していく過程というのは、「自分はこういう人間だ」というアイデンティティや、「これが良いことで、これが成功だ」という価値観を自分の中で育て、その枠の中での成功や幸せを追求していくものだともいえる。しかし、石川さんは旅先で生きることに没入することにより、自分自身を新たな可能性にアップデートし、常に生まれ直す方向へと誘ってきた。

そんな体験をしてしまうと、どんなに大変でもやっぱり行きたくなっちゃいますねと聞くと、「やめられません」と笑う。とはいえ、危険を冒すようなシーンも多いはずだ。

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写真/石川直樹さん提供

「恐怖を感じるのは、見たことがない、知らないものに出会っているから。つまりそれは“新しいもの”との出会いですよね。恐怖を避けていたら、この先で出会えるかもしれない新しい何かと出会わないことになる。だから、危ないこともあるけど、旅に出たいって思ってしまうんです。行く直前とかは、やっぱり億劫になったりしますよ。パッキングが大変で、『あー日本にいた方がよっぽど楽だな』とか。でも、『ま、いっか』と。未知との遭遇こそが自分の糧になることを実感しているから、やっぱりまた旅に出てしまうんです」

日常の暮らしの中で培われた常識や限界を打ち破る「自分はもっと変わっていける」という可能性。石川さんの写真を通して、彼の体験や体感に触れることで、私たちも未知なる面白いものと出会い、使い古した価値観を超えていくことができるのかもしれない。周囲の人は石川さんをどう見ているのだろう?

「食べ物の好き嫌いが多い友人をネパールでのトレッキングに連れて行ったんです。山なんて登ったこともない、高尾山すら行ったことがない彼でさえも、現地では文句も言わずに何でも食べていました。全身を使って、人生が変わるような体験になったんじゃないか。厳しい自然の中に身を置くことで、人間の身体は、否が応にもどんどん変わっていくんじゃないかな」