「CODA(コーダ)」と呼ばれる人々のことをご存じだろうか。「Children Of Deaf Adults」の略で、聞こえない親をもつ聞こえる子どものことだ。コーダは家庭で手話を使うため、3、4歳にもなると、ろう者である親と聴者の間における“通訳”の役割を果たす。

そんなコーダである高校生の女の子が、歌手になる夢を追うことと、家族と社会との“架け橋”となることのあいだで葛藤し成長していく姿を描いた映画、『コーダ あいのうた』が1月21日に公開される。本作はろう者とコーダの視点をリアルに映し出したとして絶賛され、2021年のサンダンス映画祭で史上最多4冠に輝き、その配給権が史上最高額の約26億円で落札された。

アカデミー賞の前哨戦であるゴールデン・グローブ賞のドラマ部門と助演俳優賞部門の2部門でノミネートされており、本年度のアカデミー賞最有力候補とも言われている。

セリフの40%を手話が占める本作は、脚本づくりの段階から「手話監督」が入っている。今回、脚本に携わった手話監督のアレクサンドリア・ウェイルズ氏に話を聞くことができた。

※本記事内の「手話」は、ASL(アメリカ式手話)を指す。

『コーダ あいのうた』あらすじ
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえるため、幼い頃から家族の“通訳”として家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択すると、顧問の先生に歌の才能を見出され、都会の名門音楽大学の受験を強く勧められる。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族を優先しようとするが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決断をするーー。

手話のセリフは「手の動き」だけではない

ウェイルズ氏は手話ができるだけでなく、ダンサー、俳優、ディレクターとして舞台やTV、映画で幅広く活動している。

本作で手話監督を務めたアレクサンドリア・ウェイルズ氏
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本作の監督であるシアン・ヘダーは作品を制作するにあたり、自ら手話を学んだが、手話を踏まえた脚本を書けるほどのネイティブではなかった。そこで、ろうの文化や歴史を理解している、演劇の経験が豊富なウェイルズ氏とアン・トマセッティ氏の2人を手話監督として起用した。

ウェイルズ氏とヘダー監督は台本の40パーセントを手話で表現しながら、それぞれの台詞の感情や意図について話し合ったという。そしてウェイルズ氏が手話のセリフを作り上げて、その様子を動画にしてキャストへ送った。
台本を手話に落とし込む作業で苦労した点を、ウェイルズ氏は次のように語る。

「若者が使う言葉、家族のなかで使う言葉、漁師が使う言葉……基本的に同じ手話を使いますが、それぞれ微妙に違います。だから4人家族の気持ちがつながっているように見える、“この家族の手話”を考えるのが1つのチャレンジでした。ひとつの単語を手の動きに翻訳するだけではなく、表情や身体の動きなどすべてがひとつの言葉になります。それをすべて読み取っていくのが手話なんです

『コーダ あいのうた』より