経済成長が見込めない日本に最も必要なのは「成熟社会のデザイン」である

“社会の潮目”が大きく変化している
広井 良典 プロフィール

それではなぜ、このように「福祉」(ここでは格差の度合い)と「環境」のありようはある程度相関するのだろうか。言い換えれば、「平等、公正」と「持続可能性」は一定の関連性をもつのだろうか。

この点は意外に論じられることがないが、おそらく次のようなメカニズムが働いているのではないか。

すなわち、格差が相対的に大きい国ないし社会においては、(1)その度合いの大きさと相関して「競争圧力」が高まり、(2)しかも格差が大きいということは「再分配」(による平等化)への社会的合意が低いことを意味するから、これら(1)〜(2)の結果、ひたすら「パイの拡大=経済成長による解決」という志向が自ずと強くなり、環境への配慮や持続可能性といった政策課題は後回しになるということである。

 

グラフの左上に位置するアメリカや日本はこうした傾向が強いだろうし、実際、トランプ政策や安倍政権はまさにそうした典型例だった。

逆に一定以上の平等を実現させている社会においては、競争圧力は相対的に緩和され、また再分配への社会的合意も一定程度存在するため、「経済成長」つまりパイ全体を拡大しなければ豊かになれないという発想は相対的に弱くなり、それとパラレルに環境や持続可能性への配慮も可能になるだろう。グラフの右下に位置するヨーロッパの国々はこうした傾向が強いと思われる。

その背景には、いわゆるソーシャル・キャピタル、つまり家族や個々の集団を超えた「信頼」や「分かち合い」への合意が浸透しているということが関与しているだろう。つまりこれら「福祉=平等、公正」「環境=持続可能性」に関わるパフォーマンスや社会のありようの根底には、そうした人と人との関係性、社会における基本的な価値観のありようが働いているのだ。

それはこの後でふれる、豊かな「成熟社会」への社会的合意とも呼べるものだろう。

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